3.3.3 浅部マグマ活動に関する研究

浅部マグマ活動に関する研究では,マグマ活動の実体を明らかにすることを目標に,含水量測定を中心とした火山噴出物の解析に取り組んでいる.マグマ中の揮発性成分量は火山噴火のポテンシャルとして重要であり,巨大噴火に到る準備過程でのマグマ中の揮発性成分量変化を明らかにする意義は大きい.また,含水量を適切に評価することによって,斑晶鉱物やマグマの液組成を用いた熱力学的温度圧力計の精度向上も期待できる.

2015年度は火山噴火予知研究センター,山梨県富士山科学研究所および常葉大学との共同研究として,富士火山の噴出物の解析を行った.富士山1707年宝永噴火については,Ho-2の組成に対応する安山岩質マグマの成因について検討し,これが噴火前の玄武岩質マグマとデイサイト質マグマの混合によって生成されたことを明らかにした.また,新富士期の最近3000年間の噴出物の斑晶組成の分析を行い,ほとんどの場合に玄武岩質マグマと安山岩質マグマのマグマ混合が噴出前のマグマに起きていたことが明らかになった.一方,個々の噴火の規模とそれらのマグマの組成や斑晶組成については明瞭な相関関係が見られず,噴火の規模を決める要因についてはさらなる研究が必要である.