3.5.11 2015年ネパール・ゴルカ地震 (Mw 7.8) 震源域中央部における稠密余震観測

2015年4月25日、ネパール国の首都カトマンズの約80km北西で、Mw7.8のネパール・ゴルカ地震が発生し、カトマンズをはじめとして約9000人の死者を伴う甚大な被害が発生した。この地震は、インドプレートとユーラシアプレートの境界で発生した逆断層型の地震である。ヒマラヤ地震発生帯は、典型的な大陸衝突型のプレート境界であり、地表地質などを拘束条件としてメガスラストの形状を含む地殻構造断面が描かれてきた(例えば、Cattin and Avouac, 2000)。しかしながら、地球物理学的な裏付けに極めて乏しい。大陸衝突境界のテクトニクス・ダイナミクスを理解する上で,地殻構造に関する知見は極めて重要である。また、高精度な余震分布は,震源断層の位置や形状を精度よく把握する上で必要である。そこで、詳細な余震分布や地震波速度構造を明らかにすることを目的とし、ネパール科学技術院(Nepal Academy of Science and Technology)とトリブバン大学トリチャンドラ校と共同で,ゴルカ地震の震源域を横切る稠密余震観測を実施した(図3-5-4)。調査測線は、西北西-東南東方向に長さ約200km,幅約80kmの広がりで分布している余震域の中央部を横切るシャブルベシからカトマンズを経てヘトウラに至る約90kmの区間に設定した。観測点は、3-10kmの間隔で35箇所に設置し、各観測点では、固有周波数4.5 Hz の地震計によって上下動及び水平動の3成分観測を行った。収録は、Geospace社製の独立型レコーダであるGSX-3を用い、サンプリング周波数を250Hzに設定して、約1ヶ月間の連続収録ができる仕様で実施した。余震観測は 2015年8月15日からと11月28日からの2回、実施した。 今後、取得した稠密余震観測データを用いたトモグラフィー解析を実施することで、詳細な余震分布や震源域の地震波速度構造を明らかにする予定である