3.5.9 2014年11月22日長野県北部の地震(Mj6.7)の余震活動と地殻構造

 2014年11月22日、長野県北部を震源とするマグニチュード6.7(MJMA6.7)の地震が発生した。この地震の余震域の西側には、糸魚川-静岡構造線の一部である神城断層の北部が位置しており、地表で確認されている活断層との関係を明らかにすることは,活断層の活動評価を行うにあたって重要である。そこで、震源域とその周辺に位置する41ヶ所の定常点で、2014年11月18日から11月30日までの期間に観測された2,118個の地震を使用し、Double differential法によって3次元速度構造を用いた震源決定を実施することで、震源断層の形状把握を試みた。得られた震源分布から、震源断層の浅部は神城断層の地表トレースと一致し、南東方向に30°~45°で傾斜する。一方、震源断層の深部は小谷-中山断層と一致し、南東方向に50°~65°で傾斜する。神城断層は小谷-中山断層から分岐したFootwall Shortcut Thrustとして 更新世に形成されたと考えられる。断層の中央部では、地震時の滑りが大きく余震活動が少ない。一方、断層北部では余震活動が活発で、地表変位が少ないため、地震時の滑りが少ないと考えられる。本研究で提案した断層モデルを使用して半空間均質弾性モデルを用いて地表変位を求めたところ、得られた地表変位分布はInSARによって観測された地表変位分布と一致した。

また,高分解能な震源域付近の不均質構造に関する知見は,地震発生様式を考える為に重要な情報である。そこで、3次元速度構造と余震分布を明らかにする目的で,余震域を含む領域に臨時地震観測点を約1km間隔で163箇所に設置し,独立型地震観測システム(GSX-3システム)を用いた稠密余震アレイ観測を実施した。観測は,2014年12月3日から2014年12月21日まで実施した。取得データに対して地震波トモグラフィー解析を実施し,3次元速度構造と余震分布を求めた.得られた神城断層を横切るP波速度構造の東西鉛直断面図からは、神城断層の深部延長に東傾斜の低速度領域が確認できる。また、InSARによる地表変位分布から推定された地震時の滑り量の大きな領域は、高Vp領域で余震活動度が低い領域に対応している。このことから、断層面近傍の不均質構造が、長野県北部の地震の破壊過程に影響を与えていることが示唆される。