3.12.1 全国の地震データ流通とデータベース

(1) 全国地震観測データ流通ネットワークJDXnet

新しい大学間の全国地震観測データ流通ネットワークJDXnetを各大学や防災科研との共同研究として開発した.JDXnet は,衛星回線に代わって,独立行政法人情報通信研究機構(NICT) が運用する全国規模の超高速広域ネットワークJGN-XやNTT が提供するフレッツ回線などの地上回線を利用した次世代データ流通ネットワークである.また,国立情報学研究所(NII) が運用する超高速広域ネットワークSINET4の広域L2 網を用いてデータ交換ルートを二重化し,安定性と信頼性を高めたシステムを運用している.2015年度末にSINET4がSINET5に更新され,JGN-Xはサービスを終了して2016年度に新たなJGNがスタートする予定である.本センターでは,JDX-netの全国データ流通が停滞するこのとないように,NII並びにNICTの担当者と綿密に協議して対応を行った.

(2) 新J-array システム

新J-array システムは,世界の大地震(M5.5 以上,日本付近はM5 以上) の発生時に日本列島で観測された地震波形データを30 分から2 時間の長時間記録として保存したものである.波形データは準リアルタイムで処理しJ-arrayサイトで即日公開している.またその中から,M7 以上の大地震についての記録を選んでDVDを毎年作成し,全国の研究者に提供している.これまでNEICからのQEDメールを利用した自動化処理を行っていたが,QEDメールの終了により新たな地震情報の取得を行い自動化システムを改良している.DVDについては,2013年と2014年のDVDを発刊した.

(3) 全国地震波形データベース利用システム HARVEST

各大学が収集している地震波形データを全国地震データ等利用系システムサイトに公開し,データの活用ならびに各大学と全国の研究者の共同研究を推進するためのシステムHARVESTを開発し,各大学に提供している.このシステムにより,どこの大学の利用システムでも共通のインターフェースで地震波形データを利用したり,データ利用申請したりすることが可能となっている.ハードウェア・ソフトウエアの更新を行い,安定した運用を提供している.2015年度は,システム更新が予定されていた年で,約半年間をかけて新システムを調達し,動作確認などを行った後に,各大学に提供しているシステムの更新を行った.

 (4) チャネル情報管理システム

チャネル情報管理システム(CIMS)は,全国の大学や防災科研,気象庁などの各機関の地震観測点の情報を分散管理するデータベースである.各機関が管理する観測点の情報をCIMS に入力すれば,自動的に他機関に転送されて更新されるため,他機関の観測点の変更情報を迅速にかつ正確に利用できるようになる.2007年10 月から各大学で利用を開始し,2014年も継続してこのシステムを運用している.2015年度は,HARVESTシステムの更新に伴い,データベースフィールドの追加等を行い,これまでデータ入力は自機関の観測点に限られていた仕様を他機関も含めて可能とし,さらにデータの入力者情報を記録することとした.

 (5) 緊急地震速報の伝達と利活用

気象庁に予報業務許可申請(地震動) を行い,予報業務の許可のもと,東京大学情報ネットワークシステムUTnet やSINET 等のネットワークを介して緊急地震速報の伝達を行っている.学内で,緊急地震速報の仕組みや技術的限界を周知し,利用するための必要な事柄を検討し,Web コンテンツと同様なアクセスのみで緊急地震速報を簡便に受信できるようにし,端末表示装置の開発も行った.2011年からは情報学環総合防災情報研究センターと共同で,学内に複数の配信サーバを設置して,全学に緊急地震速報を提供している.また2012年度からは,学内の放送設備に接続して緊急地震速報を放送する装置を開発して,まず2012年度に理学部,工学部,地震研究所,本部棟に設置され,続いて2013年度には,駒場Ⅰキャンパス,白金キャンパス,など遠隔のキャンパスにも設置された.2014年度は,残る柏キャンパスにも設置されて,2015年度には,本郷キャンパス広域放送設備に接続して,本郷キャンパスの主要な建物のほぼすべてに緊急地震速報を放送可能にした.また,それまで独自システムを使っていた附属病院においても,本システムが導入されることになり,年度末の防災訓練から利用開始されるなど,全学的な利用がさらに進んだ.また東京大学本部棟等防災訓練,理学部や工学部,地震研等の部局の防災訓練,駒場キャンパスや柏キャンパスの防災訓練,医科研や附属病院における防災訓練などにおいて,本装置による緊急地震速報の訓練放送が広く活用された.2014年度に情報学環総合防災情報研究センターと共同で,緊急地震速報によるエレベータ制御装置を開発した.本装置は改修した安田講堂に新たに設置されたエレベータにおいて2015年度から利用されている.