3.12.6 巨大地震・津波の研究

津波データや測地データ,地震データを用いて,世界の巨大地震の断層運動の詳細や津波の発生過程について調査している. チリ周辺で発生した2010年マウレ地震,2014年イキケ地震,2015年イヤペル地震について,遠地地震波や津波データなどから断層面上のすべり分布と破壊伝播速度の推定や太平洋を横断する津波の特性の解明を行った(図3.12.6). 2015年にパプア・ニューギニア及びソロモン諸島で発生した地震について,遠地実体波及び津波波形の解析を行って津波の発生過程を調べた.インド洋マカラン沈み込み帯で1945年に発生した地震やパプア・ニューギニアで1998年に発生した津波について,断層運動及び副次的な海底地すべりが起源であることを定量的に示した.米国カスケード沖に展開された海底地震計アレイに附置された水圧計データの解析を行い,2010年ハイダグァイ島地震からの津波波形の解析とデータ同化を試みた.

 2011年東北地方太平洋沖地震による津波は,日本海・ロシア沿海州で津軽海峡を通る伝播時間よりも早く記録されたが,そのメカニズムを明らかにした.日本海東縁部の断層について,モード解を用いてそれらの津波励起特性を調べたほか,沿岸での津波高さや陸上への浸水を推定した.

 東北地方太平洋沖地震の断層モデルから,実際に発生した地震のメカニズム解を受け手側の断層としてクーロン応力変化を計算し,茨城県南西部・千葉県北部のやや深発地震や伊豆・箱根の浅い地震等,東北地方太平沖地震後に関東地方において活発化した地震活動の多くが本震による応力変化で説明できることを統計的に示した.