3.10.4 2016年熊本地震に誘発された大分県中部の地震

2016年4月16日熊本地震M7.3による地震波の伝搬中に,大分県中部でM5.7(気象庁の参考値)の地震が発生した.本震からの地震波が通過中にM<5の地震が誘発された例は数多く報告されているが,M≥5の報告例はほとんどない.破壊核が成長するのに一定の時間がかかるためと解釈されている.本地震のMの推定では,本震からの地震波が重なっているので過大評価になっている可能性があるが,K-NET,KiK-netの5観測点の強震波記録,国土地理院による由布院観測点での地殻変動データをもとに検討し,M6クラスの地震とみなしてよいことを確認した.

1983年以後,別府万年山断層帯で発生したM≥3の震央分布(図1(a),赤)と,今回の大分県中部における余震域(青)とは棲み分けているように見える.また,この余震域では2011年東北沖地震などにより誘発されたと考えられる地震が度々発生している(図1(b)).熱水地域,あるいは若い火山帯で誘発されやすいことが知られており,本余震域はその両方の条件をみたしているが,他のM≥7の日向灘地震で誘発されなかった例もあり,発生メカニズムについて検討を進めている.