3.10.5 西之島における火山観測

 小笠原諸島の西之島は,2013年11月に海底噴火を開始し,2015年11月頃まで活動が続いた.噴出した溶岩は旧島の大半を覆い面積で2.7㎞2,噴出量は1.6㎞3に達した.推進センターにおいては,火山センターと密接に協力しつつ,2度にわたって西之島の観測を実施した.

 2016年6月の観測では,気象庁の啓風丸に乗船し,火口から1.5㎞の範囲に設定された規制区域の外から無人ヘリコプターによる観測を実施した.4Kカメラによる島内の撮影を行い,溶岩流の形態的特徴を詳細に捉えるとともに,島内中央付近に成長したスコリア丘の内部及び表面に発達した亀裂構造を観察した.また,スコリア丘の麓において溶岩組成分析を目的としたスコリアのサンプリングを実施した.

 2016年8月には規制区域が500mに縮小され,上陸が可能になった.これを受けて,2016年10月に大気海洋研の新青丸に乗船し,上陸調査を実施した.上陸調査においては,地震計および空振計を旧島に設置した.設置したシステムは,太陽電池により電力を供給し,広帯域地震計,空振計の2種類のセンサーを備え,西之島の火山活動の再活発化に伴う地震活動の変化,微動など火山性地震の検出,噴火やスコリア丘崩壊などに伴う空振の発生に備えたものとなっている.データは衛星通信を介して東京まで転送される.衛星通信で全ての連続データを送るのは経費的に困難であるため,1日分の波形を1枚の画像に圧縮したものを毎日定時に転送し,その中に特異なイベントが含まれていた場合に該当する時間帯の波形ファイルを衛星経由で回収するという仕組みを実装した.これにより,通信料を抑制しつつ活動状況を連続的にモニターすることが可能になった.