3.4.6 海外地震被害調査の実施

(1)ネパールとの2国間共同研究

ネパールにおける建物の耐震性能向上に資する研究の枠組みとそのロードマップ作製を目的として,J-RAPIDの支援の下,ネパール側カウンターパートと共同研究を実施した.特に上層に枠組組積造を用い,最下層で壁が減少するいわゆるピロティ建物について,枠組組積造を考慮した耐震診断手法の提案を実施するとともに,その対策案を提案した.

(2)ニュージーランドとの2国間共同研究

鉄筋コンクリ-ト構造の建物における耐震壁部材の耐震性能評価法の精度向上を目的にして,日本とニュージーランド(以下NZ)で共同研究・ワークショップを行った.2011年NZクライストチャーチ地震,2011年東北地方太平洋沖地震,2016年熊本地震などによる被害を背景にして,既往の研究成果を2016年9月NZワークショップで報告し(日本側は9名参加),NZSEE誌に論文を投稿した.熊本地震に関して7月に地震研究所で報告会(NZ側5名参加), 9月にNZで報告会(一般公開)を開催した.2017年にも研究成果報告会を予定している.

(3)熊本地震被害調査

2016年4月14日から16日にかけて九州地方を襲った熊本地震では地震動によって数多くの建物に深刻な被害が生じた.この地震では前震(14日M6.5),本震(16日M7.3)によって同じ地域で短期間に震度6強から震度7の強い地震動が2度観測された.学校建築にも多くの被害が見られたことから,日本建築学会では文部科学省から委託された調査研究を実施するために熊本地震学校建築被災度判定WG(主査:壁谷澤寿海)を設置し,学校建築・教育関連施設(約518棟)の被災度判定と被害調査を行った[図3.4.5].調査結果の詳細は日本建築学会の調査研究報告書等にまとめられている.

[図3.4.5]