3.3.6 惑星科学グループ

地球の理解のためには地球を客観視できる視座が必要である,との観点から太陽系内の他天体との比較研究を進めている.主たる対象は地球とよく似た内部構造を有する火星とリゾスフェア・アセノスフェアの概念の並行性が存在する氷衛星である.特にこれらの天体の火成活動に注目し,研究を進めている.

太陽系内で現在活発な火成活動を繰り広げている3個の天体(地球,木星の衛星イオ,土星の衛星エンケラドス)のうち氷衛星であるエンケラドスの火成活動の熱源問題に挑戦している.エンケラドスは直径500kmの小型の天体であるにもかかわらず内部に融解層・内部海が存在し,表面から水蒸気の噴煙プルームを吹き上げている.その活動の熱源が謎とされていたが非定常的潮汐加熱モデルを作成し,熱源としての定量的なモデルを提出した.

 火星では新しい形成年代をもつ溶岩流が発見されているが,この溶岩流に伴うマグマ・水相互作用により形成されたRootless Coneとアイスランドの類似の火山との比較研究を行ってきた.アイスランド・ミバトン湖周辺域の溶岩流の野外調査により火星と類似の2重構造を有するもの:Double Rootless Coneを発見し,その構造,成因をあきらかにした(図3.3.4).

 また火山で生じているダイナミックな現象の理解に向けてマグマ想定物質のレオロジーの解明に取り組んでいる.高濃度のSiO2コロイドゲルの非ニュート性レオロジーの研究では特徴的な応力変動現象を発見した.これはRheological Stick-Slip とも呼べるような興味深い現象で,流動状態にも関わらず見かけ上応力が蓄積され解放されるというプロセスを示す.