3.5.9 2016年熊本地震

2016年熊本地震の前震から本震に至る過程を調べるために,熊本地震発生後に展開された熊本地震合同地震観測グループによって取得されたデータを用いて再解析を実施した。その結果,定常地震観測網のデータのみの解析結果に比べて,前震域の拡大がより鮮明になった。特に,断層面の浅い方向への拡大や各地震クラスターの拡大が明瞭となった。また,熊本県阿蘇郡西原村を中心に展開した超稠密地震観測網のデータを解析することで,余震域の上限の深さが約2 ㎞であることや,横ずれ断層と正断層運動の共存を示唆する震源分布,布田川断層の地表トレース付近から北西方向に傾斜する低速度層が分布することなど,を明らかにした。さらに,熊本地震の本震に伴って出現した地表の地震断層と浅部の地震活動との関連性を詳細に調べるために,熊本県上益城郡益城町・阿蘇郡西原村を中心に約1000点から構成される多重稠密アレイ地震観測網(短周期地震計)を設置し,約50日分の連続波形記録を取得した。