3.10.2 陸域機動観測

 2011年に発生した東北地方太平洋沖地震以降,特定の地域において地震活度が増加したり減少したりするなど内陸部の地震活動に大きな変化がみられた.これは,プレート境界における変位により,日本列島の内陸部の地殻の応力状態が変化し,地殻活動の変化が見られたと考えられる.プレート境界の大きな変位に伴う内陸部での地殻活動の変化の把握と解明は,プレート境界の運動に対する日本列島の地殻応答として,内陸部に発生する内陸地震の発生メカニズムを把握するためにもひじょうに重要である.これまでに,東北地方太平洋沖地震以降,地震活動の急激な増加が見られたいわき地域を通り,島弧を横断する形で新潟に抜ける測線での,地球物理学的観測研究を行った結果,地震学的研究や電磁気学的観測研究から,脊梁地域や日本海側においても地殻内部に低速度域や低比抵抗域が見つかるなど,地殻内流体の存在についての証拠が示されてきた.しかしながら,地域的な違いが大きいため,全体の構造を理解するためには,さらに広い領域での解析と比較検討が必要となった.また,脊梁地域や日本海側で検出された低比抵抗域が地震発生域とどうつながるかについて,地震発生ポテンシャルの解明に向けた研究が重要な課題となった.

 これらの成果を踏まえ,東北地方太平洋沖地震発生後飛躍的に地震活動の増加した阿武隈山地より南側の,地震活動の増加が見られなかった北関東から2004年新潟県中越地震の震源域を通る島弧を横断する測線を調査対象とし,島弧の地殻・上部マントルの高精度な不均質構造モデルを構築するために29点の地震観測点を展開し,自然地震観測を開始した.