3.10.4 沈み込むフィリピン海プレートの構造

南アルプス南端部はフィリピン海プレートの沈み込みによる伊豆弧の衝突帯の西縁に位置し,東海地震の想定震源域に含まれている.この地域のテクトニクスを理解するためにプレートの形状や物性の把握が必要であるが,この地域に特化した詳細な研究はこれまでほとんど行われていなかった.そこで,静岡大学,帝京平成大学,名古屋大学と共同で2013年に4ヶ月間の稠密アレイ自然地震観測を行った.アレイ観測点34点(図3.10.3)に近傍のHi-net観測点を加え,レシーバ関数解析,地震波トモグラフィ,および3次元速度構造を用いた震源再決定によりプレートの詳細な構造を推定した.レシーバ関数深度断面から,プレート構造は先行研究と比較して凹凸のある形状をしていることが推定され,海山の沈み込みや伊豆弧の衝突・沈み込みの影響が示唆された.また,地震波トモグラフィと震源分布から,海洋地殻が測線の南西部と北東部で異なる性質を持つことがわかった.これらの違いにより,プレートが沈み込んだ先で発生する深部低周波地震の活動の空間変化を説明できる可能性がある.