3.4.1 大地震の震源過程解析と強震動の生成過程の研究

(1) 2011年東北地方太平洋沖地震

東日本大震災を引き起こした2011年の東北地方太平洋沖地震は,世界で初めて強震と遠地,測地,津波の稠密ネットワークによって観測された超巨大地震である.しかし,これらネットワークで得られたデータセットに対してチェッカーボードテストを実行してみると,個別データセット単独では限られた分解能しか持っていないことがわかった.この限られた分解能を克服するため,複数のデータセットに対して合同インバージョンを行い統合震源モデルを構築した[[図1]].このほか,この地震以前の東北地方太平洋沖におけるすべり欠損の状態や,地震時の強震動パルス源の特定,地震後の余効変動の状況も併せて解析した.これらの研究成果をもとに,2012年4月に日本学術振興会助成による国際研究集会「2011年東北地震の震源研究の最前線」を開催した.

[図3.4.1]

(2) 三次元グリーン関数を用いた震源過程解析

震源過程解析の精度にはいろいろ要因が影響しているが,中でもグリーン関数の精度が大きな影響を与える.グリーン関数は地下構造モデル内の単位震源に対して理論的に計算されるので,地下構造モデルは通常用いられる一次元構造モデル(水平成層構造モデル)より現実に近い三次元構造モデルを用いる方がグリーン関数の精度を大きく高める.こうした三次元グリーン関数の計算手法の研究を進めるとともに,1923年関東地震,1952年と2003年の十勝沖地震,1995年兵庫県南部地震などに対して,三次元グリーン関数を用いた震源過程解析を行った.

(3) 国内外の被害地震の震源モデル

強震動(災害につながる強い揺れ)の研究とは,地震の震源の破壊過程・地震波が地球を伝わる現象(波動伝播)・地面が揺れる現象(地震動)といった一連の現象を理解することである.強震動をともなう地震は,他の自然災害に比べて稀にしか起こらないため,起こった地震の詳細な震源モデルを着実に蓄積することに格別の重要性がある[[図2]].これらの震源モデル群からは海溝型地震のスケーリング則などが見出された.また,2007年新潟県中越沖地震や2009年ラクイラ地震などでは広帯域の解析を行い強震動の生成過程を検討した.

[図3.4.2]