3.5.12 ニュージーランド北島ヒクランギ沈み込み帯の研究

オーストラリア・プレート上にあるニュージーランド北島の下には,東から太平洋プレートが沈み込むことによって, ヒクランギ沈み込み帯が形成されている.特にこの地域は,関東地方と類似して陸域下での浅い沈み込みが進行し,プレート境界の物理特性とその挙動を明らかにする上で格好の地域である.2009年以来,当センターでは,ニュージーランドGNS Science,ビクトリア大学ウェリントン校及び南カリフォルニア大学と国際共同観測研究を実施してきた. 海陸統合制御震源地震探査からは,北島下に沈み込む地殻の厚い(~12 km)ヒクランギ海台やプレートの沈み込み形状の構造が明らかになった.また,散乱波を用いた解析によって,プレート上盤側のワイララパ断層のイメージングに成功した.また2012年4月から2013年3月にかけて北島の東方沖海底に4台の海底地震計(2台は広帯域海底地震計及び海底圧力計)を設置し,この地域に発生している地震活動・スロースリップの観測を実施した(図3.5.6).その結果,ヒクランギ沈み込み帯では微小地震活動が活発で,プレート境界面では水が多く存在する領域の周辺で特に活発であること,また海岸線より海側で地震活動の発生していない帯状の領域が分布すること,さらに2013年2-3月のスロースリップの発生に伴って,スロースリップでのすべり領域の縁辺のプレート境界面で地震活動が活性化することを明らかにした.2014年5月にはニュージーランドのNIWA所属船舶Tangaroaを利用して,2015年6月までの~1年間の予定で,日・米・NZ国際共同海域地球物理観測の一環として海底地震計,海底圧力計,海底電位差計を設置し,現在観測中である.