3.5.7 日本海地震・津波調査プロジェクト

2011年3月11日に発生した「東北地方太平洋沖地震」に伴う大津波は,日本列島の広汎な領域に極めて甚大な人的・物的な被害を及ぼし,防災対策の見直しが必要になっている.日本海側には,津波や強震動を引き起こす活断層が多数分布している.このことを背景として,文部科学省の「ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究(平成19〜24年)」において新潟沖〜西津軽沖にかけての領域を対象に調査観測を進め,震源断層モデルを構築した.しかし,それ以外のほとんどの地域については,震源断層モデルや津波波源モデルを決定するための観測データが十分に得られていない.したがって,このような基本的情報の整備の遅れが,日本海側の地震・津波災害に対する情報不足につながり,自治体・事業者・住民等が防災対策をとる上での懸念材料となっている.このような問題点を解決するために,2013年度より「日本海地震津波調査プロジェクト」が開始された.本プロジェクトでは,日本海の沖合から沿岸域及び陸域にかけての領域で,津波の波高予測を行うのに必要な,日本海の津波波源モデルや沿岸・陸域における震源断層モデルを構築するための観測データを取得する.また,これらのモデルを用いて,津波・強震動シミュレーションを行い,防災対策をとる上での基礎資料を提供するとともに,地震調査研究推進本部の実施する長期評価・強震動評価・津波評価に資する基礎データを提供する.また,このような科学的側面に加えて,津波や強震動による被害予測に対する社会的要請の切迫性に鑑みて,調査・研究成果にもとづいて防災リテラシーの向上を目指して,地域研究会を立ち上げ,行政と研究者間で津波や強震動による災害予測に関する情報と問題意識の共有化を図る.

2014年度は,福井沖〜鳥取沖の沿岸海域において,反射法地震探査を実施した.また,富山県富山平野南縁から石川県羽咋沖の区間で海陸統合を実施し,活断層の深部形状の他,島弧・背弧海盆の基本的な地殻構造の推定に資するデータを得た.また,海域プレート構造調査では,日本海大和海盆の領域において,広帯域海底地震計を含む長期観測型海底地震計計6台程度を回収・再設置し,長期海底地震観測を継続し,プレート構造を明らかにする解析を実施した.また,変動地形調査については,砺波平野西縁および宝達山地東麓部を横断する測線で高分解能反射法探査を実施し,伏在断層を含む逆断層帯と,最近の活動を示す堆積構造をイメージングすることに成功した.