3.5.8 立川断層帯の重点的観測・研究

立川断層帯は首都圏の人口稠密地域に位置する.2011年東北地方太平洋沖地震後,首都圏の地震活動は活発化しており,本断層帯を震源とする将来の地震発生についても危惧されている.本断層帯については,変化する応力状態に対応した地震発生の評価に重要な震源断層の形状については不明な点が多く,また長期評価に重要な活動履歴の信頼性は低いとされ,過去の活動時期についてさらに精度良く絞り込む必要がある.また,断層帯の走向から相当程度あると想定される横ずれ成分の平均的なずれの速度は全く不明である.さらに想定震源域が人口稠密地に位置することから,より精度の高い強震動予測が必要になる.こうした背景から,震源断層の形状の解明,断層の詳細位置と活動履歴・平均変位速度の解明,強震動予測高度化を目的とした調査観測が,2012 年度から3ヶ年計画で始まった.この研究には地震研究所の他に,首都大学東京・地震予知総合研究振興会・東京工業大学が参加している.2014 年度は,立川断層帯の形状を明らかにするために,これまでデータのなかった断層帯北部において二次元反射法地震探査,重力解析を行い断層周辺の3次元密度構造モデルを作成した.また,臨時観測データ,基盤的地震観測網データおよびMeSO-netデータを基に,高精度震源再決定,発震機構解再解析,トモグラフィー解析を行った.変動地形・地質調査などの成果も含め,強震動計算に必要な断層形状モデルを構築した.三年間の調査観測の成果から,立川断層帯についての総合的なとりまとめを行った.その結果,活断層としての特徴が認められるのは,従来の立川断層北部のみであること,その変位センスは横ずれ成分が卓越し,断層の発掘調査から最新活動時期は中世以降であることが明らかになった.