さて、ご質問に対するお答えですが、「意外と津波は小さい」ということが言えます。そのために、津波のメカニズムについて、簡単に解説をしておきます。
海域で大地震が発生した場合には津波が発生することがあります。その時には、広い範囲の海底が急激に隆起または沈降し、その結果その上に乗っている海水が盛り上がったり沈んだりします。その海水の動きが周辺に波として伝わっていくのが津波です。巨大地震の場合には、100km四方を超える範囲の海水が一気に1メートル近くも盛り上がったり沈んだりしますから、波の波長が非常に長くなります。そのような波が海岸に押し寄せた場合には、海面がゆっくり上昇したり下降したりします。そのため普通の海の波に比べて陸の奥深くにまで流れ込みます。この流れは大変速く、破壊力も強いので、津波は大きな被害をもたらすのです。
ところで、映画のような爆発の場合の津波は、大地震の津波に比べて思ったよりも小さいはずです。その理由は主に二つあります。
まず、津波の波源域が小さいことです。海水が最初に盛り上がったり沈んだりする領域を津波の波源域と言います。2004年のスマトラ沖の地震では、長さが1000kmにも及ぶ範囲で海水面が盛り上がったり沈んだりしました。この場合、震源域の伸びに垂直な方向に波は横一線となって伝わり、減衰しません。しかし映画の爆発は、せいぜい1km程度の狭い範囲ですので、同心円状に波が伝わるためどんどん波のエネルギーが減衰していきます。
もう一つの理由は、爆発による津波は波長が短いことです。巨大地震の波源域の大きさが100kmもあるのに対し、映画での爆発による波源域の大きさが1km程度ですから、波長も1km程度です。そのため、通常の津波では海面の上昇から下降までが数十分であるのに対し、今回の爆発によるものはせいぜい1分程度です。ですから、波の高さは高くなったとしても津波としての威力はそれほど無いと思われます。
なお、映画では架空の爆弾を使っているのですが、津波を引き起こすエネルギーは映像から推定することは可能です。津波を引き起こす直接のエネルギーは、海面の盛り上がりやへこみの「位置エネルギー」です。「位置エネルギー」というのは少し難しい言葉ですが、要するに、より高いところにあるものが落ちると、周りにより大きな影響を与えることです。爆発によって津波を引き起こすエネルギーは、どの程度の海水がどの程度の深さから吹き飛ばされたかを計算すれば良いわけです。水柱の大きさから見て、おそらくさしわたし百メートル程度の範囲の水が深さ1000mくらいまで吹き飛ばされたのではないかと想像します。この場合、津波をおこすエネルギーは2003年十勝沖地震(マグニチュード8.0)と同程度かと見積もることが出来ます。
スマトラ沖の津波の伝わり方については、下記の産業技術総合研究所の佐竹博士のホームページを参照してください。
http://staff.aist.go.jp/kenji.satake/Sumatra-J.html