粉体のジャミング転移を記述する普遍法則

 

 

地面を形作っている岩石や土砂などは一見堅固に見えますが、あるとき突然流体のように動き始めることがあります。地震などに伴う地滑り、火山噴火に伴う山体崩壊などはその代表的な例でしょう。このような斜面災害の予測のためには、岩石や土砂などの粉体がどのような条件下で流れ始め、また止まるのかを知ることが大事です。したがってこれまで様々な状況を模擬した実験やコンピュータシミュレーションが行われてきました。それらの研究により、「流れている粉体の内部にどのような力が働いているのか」という問題に対してはだいぶ理解が進んできました。しかし「どのような条件下で再び停止するのか」という問題はきわめて難しく、まだよく分からないままです。

 

なぜ難しいのでしょうか?流れが停止する直前では粉体の粒粒がより高密度状態になり、いわば「押し合いへしあい」の状態になります。満員電車の中で一人だけ隣の車両へ移動することが不可能であるように、粉体粒子もこのような押し合いへし合いの中では勝手に動きまわることは出来ません。満員電車では降りる人のために周囲の人が協力してあげなくてはいけないように、実は高密度の粉体流でも粒の一つ一つが協力しあって動いているのです。しかも、流れが遅くなればなるほど協同して動く粒粒は多くなっていき(図1)、停止寸前には全ての粒が協同的に動くようになります。したがって停止寸前の遅い粉体流を完全に理解するためには、このような無数の粒粒の協同運動を「見切る」ことが必要です。当然そのような見切りは非常に困難であり、人類はまだこれを達成していません。

 

図1. 粉体の遅い流れにおける、粒子の協同的な動き方を図示したもの。速い粒子を青く、遅い粒子を赤く表示している。速い粒子と遅い粒子がバラバラに存在しているのではなく、それぞれ空間的にまとまって存在していることが分かる。流動速度がゼロに近づくにつれて、このまとまりの大きさはどんどん成長していく。

jamming

 

しかし、このように「無数の構成要素が協力し合う」現象は、実はある種の相転移に特有のものであり、そこでは全ての観測量がある特殊な数学的表現で記述される法則に従うようになります。本研究で発見された主な成果は、流動している高密度粉体のジャミング転移がその特殊な数学法則に従うということです。このことは粉体の流動と固化が単なる見かけの変化だけでなく、明確な相転移として記述されることを意味します。

 

本研究の結果が示唆する更に興味深い事実は、ある温度以下で巨視的な磁化が出現する強磁性体などの(平衡)相転移を研究するために用いられた様々な解析方法が、(多少の修正で)粉体のジャミング転移の解析にも使える可能性であり、今後、理論物理学分野と固体地球科学分野の学際領域を切り開く研究が大きく発展することが期待されます。