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Hiraga Lab, Division of Earth and Planetary Materials Science, Earthquake Research Institute,The University of Tokyo

東京大学 東大 toudai東京大学地震研究所

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1

研究内容RESEARCH

平賀研

長らく研究室内でのクリープ実験に従事・君臨してきた宮崎は、多くの研究成果と同様に多くの謎を残して、次ぎの彼の将来に飛び去ってしまった。その謎の一つは、粒界すべりの選択性である。粒界の種類によって、粒界すべりが卓越するか否かが大きく異なり、その影響が地球科学的に大きな意味を持つとしか思えない。その検証と「なぜ」を解明する宮崎の正当なる後継者に丸山が就任した。 
丸山の修士2年間に、その「なぜ」どころか、宮崎の一連の仕事で予想された拡散クリープ下での粒界すべり、粒子スイッチング、粒子回転、そして最終的な結晶軸選択配向(CPO)の全てが、変形を直接観察することで明らかになってしまった。彼は、1200°Cを超える高温条件下で試料を変形し、その試料を電子顕微鏡で観察することを繰り返すことで、試料表面で生じたサブミクロンスケールの変形を4コマ漫画のように追った。そもそも、そんなミクロかつ同じ場所を高温変形実験後に定点観測のごとく観察できると、指導教官はつゆにも思っていなかった。。。が、当の丸山はあっさりとやってのけてしまった。ホントウニ、シンジラレナイ。。。得られた膨大な観察像には、粒子のダイナミックな動きが克明に記録されていた。その一例を紹介する。

拡散クリープ下での粒界すべり、粒子スイッチング 粒子回転 結晶軸選択配向 CPO
左図から右にかけて、試料歪0.05ずつ増加していく。線は、FIBによって掘られた幅100 nmの溝で、圧縮方向はそれに平行である。我々はこれをマーカーと呼ぶ。マーカーは、高温にさらされることで不明瞭になるが、それでもどの粒子が次の像の中のどの粒子に相当するかくらいは、教えてくれる。番号がふられた1から4の粒子群に注目する。圧縮方向で離れて存在する1と4の粒子は、自然に引かれ合う男女のごとく徐々に近づきあい、3コマ目まででめでたく接吻(4重点の形成)、4コマ目でめでたく○体。。。(粒界の形成)。と、某シンポジウムで解説したら、予想に反して会場が凍り付いてしまった。それに対し、引っ張り方向で接する2と3の粒子は、変形と共に離れていき、4コマ目では、もう完全にバイバイしまっている。これらの粒子の相対位置の変化はどのようにもたらされたのか?2コマ目では、1と3の粒界で、あたかも断層におけるズレのようにマーカーのオフセットが確認される。3コマ目ではさらにそれが拡大している。まさに、粒界すべりによって粒子の相対位置が変化する粒子スイッチングである。5の粒子では回転も確認される。以上のプロセスは、長らく頭では理解・想像していたことだが、まさか、「自分が生きている間に本当に観られるとは!」。そんな大ゲサな、と思われるかもしれないが、偽りない気持ちである。

下の図では、1−4の粒子間で、上と同様なスイッチングが生じており、最終的に離れていた1と4の粒子が接し、反対に2と3の粒子は離れ離れになってしまった。その間、短冊状の4の粒子は連続的に右回転していく。最終的に右に〜20度も回転した。これらの回転は定量的に評価され、試料中で、粒界に働くせん断応力と結晶学的な面に平行な粒界(短冊状粒子の側面を作る2つの平行な粒界)が他の粒界と比べて3倍程度すべりやすい、ということまで明らかにすることができた。

拡散クリープ下での粒界すべり、粒子スイッチング 粒子回転 結晶軸選択配向 CPO
ここで我々は図に乗った。どんな鉱物でも、粒子の形を観れば、「結晶学的な面に平行な粒界」か否かは分かる。そして、それが発達するときは、変形と共にCPOが形成され、地震波速度異方性が生まれる。逆に、発達しなければ、最終的に地震波速度異方性は生まれない。。。下にあるよう、人様(多くは、三朝の山崎・芳野さん:この場で感謝)のさまざまなマントル鉱物の微細構造の像をまとめ、それと全マントル地震波速度異方性の深度マップを対比させ、「合う」とまで言い切った。言い換えれば、「全マントルは拡散クリープで変形している」。予想に反して、レビューワーから、少し表現を和らげたら?と提案されるにとどまり、無事、JGR誌に2編のつづき論文として公にすることができた。レビューワーか誰かが、「(宮崎論文で提案した)地球内部拡散クリープ説がさらに確かなものに。」と帯をふってハイライト論文と認定する尾鰭までついた。たった修士2年間の仕事ですが。。。自分が学生だったときを考えると、アリエナイ。しかし、そんな感慨もJGRからの請求書を見て、一瞬でふっとんだ。そこには、ページ超過料50万円とあった。
全マントル地震波速度異方性の深度プロファイル マントル鉱物 微細構造
右はPanning and Romanowicz [2006]で示された全マントル地震波速度異方性の深度プロファイル。左は、各マントル深度域でのマントル鉱物(組み合わせ)の微細構造。上からMiyazaki et al. [2013], Nishihara et al.[ 2006], Yamazaki et al., [2005], Yamazaki et al. [2009], Yoshino and Yamazaki [2007], Yoshino and Yamazaki [2007], McCormack et al. [2011].

丸山は、修士卒業後、モウレツ社員として働きつつ、週末に大学に出てきて論文完成までこぎつけた。彼が、どんどん痩せていき、一時はもう論文どころではない、とあきらめかけたこともある。しかし、丸山のなした仕事は、絶対に世に出さなくてはいけない、そんな使命すら感じるに十分なものであった。2年間の苦闘は終了した。最近、少し丸くなった丸山を見て安心した。


将来テーマ
コアから地殻まで、地質学、岩石学、鉱物学、鉱物岩石物理学、地球化学、地震学的なもの多々あるので、興味があれば是非聞いてください。


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