橘が出した二相系粒径システマティックス(修論)のレオロジー版。そもそも岩石レオロジーは、岩石に最も多く含まれる鉱物(つまり単相系)のレオロジーで議論されることが多いが、それは大きな単純化であることはフツウの岩石を知っている人には自明である。特に、粒径が支配するレオロジーでは、鉱物そのものの特性というよりは、粒界・界面の特性が現れても不思議ではない。また、粒径自身も橘の修論が示したように(Hiraga et al. 2010)、鉱物のモードでそれぞれの鉱物の粒径がコントロールされる。田阪さんは、静岡大の道林さんからの試料提供の協力を得て、実際のペリドタイトマイロナイト中の粒径が理論・実験結果から予想されるものによく対応されることを示した。それに加え、実験試料の二相分率を変化させた、彼女の膨大な数の実験より、鉱物モード−粒径−粘性の関係則を確立することができた。また、これらは、鉱物多結晶体の特性値である拡散係数や界面エネルギーなどからの予想と一致した。つまり、これらの値を持っていれれば、どんな岩石にも適用できることを意味する。これはすごい。
現在、これらの結果は、 Influence of mineral fraction on the rheological properties of forsterite + enstatite during grain size sensitive creep 1と2の2部作としてJGRにまとめられた (Tasaka & Hiraga 2013 JGR, Tasaka et al. JGR 2013)。今、このパート3を投稿中。D論の全てをJGRでの長大な3部作完結を目指して、彼女は奮闘中。