2004年新潟県中越地震緊急余震観測・速報(2004115日)

                           (2004117日修正、119日修正)

 

 東京大学地震研究所・緊急余震観測グループ(*)

 

160回地震予知連絡会(平成16114日)に、東京大学地震研究所が提出した「緊急余震観測」関係の資料をまとめて以下に示します。この資料は、緊急余震観測の解析結果の速報であり、データ処理・解析が進み、結果が修正されることもあります。この資料の内容を引用される場合には、「第160回地震予知連絡会(平成16114日)資料・東京大学地震研究所」と明記してください。なお、本調査研究は科学研究費補助金(特別研究促進費)「2004年新潟県中越地震の余震に関する調査研究」の補助を受けています。

 

 

P.2 緊急余震観測点(14観測点)の設置状況と日別の余震分布

20041024日から観測点を設置し、そのうち、28日に14点を回収した。これらのデータを用いて解析した結果、23日の本震(M6.8)と最大余震(1834M6.5) は西傾斜の別の震源断層で発生し、271040分のM6.1は、更に別の東傾斜の震源断層で発生したことが推定された。余震分布から、少なくとも3枚の断層面が推定される。

 

P.3 緊急余震観測点(14観測点)による日別の余震深さ分布

P.2の図(a)から(d)の震央に対応する深さ分布をN35Eに向かう方向で見た断面図。観測は、3成分の連続記録を行った。この解析では、気象庁1元化震源(1030日現在)に基づいて抽出した地震を対象とした。

 

P.4 緊急余震観測点を用いた震源と気象庁一元化震源との比較

 連続記録した緊急余震観測データ(102418時から2712時まで)を、気象庁一元化震源を基に編集した。この期間に、対応付けられた地震442個。緊急余震観測データを用いた震源は、一元化震源に比べ全体的に西北西に決まり、浅くなる傾向がある。

 

P.5 緊急余震観測によって得られた震源分布2004117日修正、119日にP.5図の中の文章を修正

地震発生翌日の24日から設置された観測点のうち14点を回収し、震源決定を行った。緊急余震観測点のデータが存在する102418時から2720まで、緊急余震観測点とすぐ近傍のテレメータ観測点だけを用いて震源決定を行った。その震源を元にして、周辺部のテレメータ観測点の観測点補正値を求め、本震やM6級の地震の震源を求めた。

その結果、余震分布はひとつの面上に分布するのではなく、いくつかのクラスターに分かれていることがわかった。本震を含む余震の面は、高角な西傾斜で、最大余震を含む余震の面も同じ傾きの西傾斜であるが、それらの面は約5kmの間隔を隔てている。本震発生3日後の27日に発生したM6.1の地震は、本震や最大余震とは違って、低角な東傾斜の面をなしている。これらの分布は、F-netによるメカニズム解と矛盾しないため、これらの面が地震断層面であったと推定される。これらの周辺部でもM6級の地震が発生していて、それらの周辺にも余震が分布している。それらは、低角な東傾斜の面に見えるが、明確な面が形づくられているわけではない。まず高角西傾斜の本震が発生し、その直後に北端と南端でM6級の地震が発生し、その約20分後に本震のすぐ東隣で同じ西傾斜の最大余震が発生した。そして3日後に、さらに東隣で、低角東傾斜の地震が発生した。

 

P.6 余震分布と速度構造モデル

緊急余震観測データに、Double-Difference トモグラフィー法(Zhang & Thurber, 2003)を適用して、余震分布と速度構造の関係を検討した。震源域では、地表付近で、東側では、基盤が露出し、西側では、厚い堆積層があるだけでなく、深さ10km程度まで、東西方向に速度の不均質が存在する。本震の震源断層に対応する余震(主断層余震群)は、高速度領域と、低速度領域の境界部に位置する。主要な3枚の断層面の他に、東傾斜の低角の断層面も見える。主断層余震群は、深さ4km程度で傾斜が変わり、浅部では、より低角になる。

 

P.7 余震分布に基づく応力再分配の解析

緊急余震観測により得られた余震分布から震源断層を設定し、本震(M6.8)、及び、最大余震(18:34M6.5)による応力再分配と最大余震、及び、10/27に震度6弱を記録した余震(10/27余震)の発生について検討した。その結果、クーロン応力の増加領域で余震が発生したと考えることが可能であることが分かった。

 

P.8 中越地震震源域の地殻・地質構造

本地震の震源域は、日本海拡大時に背弧リフトとして形成された新潟堆積盆地の東縁を限る新発田-小出線と、リフト内のtear faultとして形成された柏崎-銚子線の交差部に位置する。

 

P.9 震源域周辺の地質・重力・活断層と余震分布

 

P.10 震源域の地殻構造推定断面(p.9のA-A’)と、震源断層の空間配置概念図

 

 

(文責:平田直)