技術官*1の新研修制度発足にあたって

1998年 4月20日
地震研究所 研修運営委員会
委員長 笹井洋一

平成10年度から新たに技術官の研修制度を発足させることになりました。これは(a) 観測・実験、(b) 機器・技術開発、(c) 情報・データ処理といった分野で、地震研の研究教育活動の基盤を担っている技術官の、技能を向上させることを目的としています。地震研究所では、観測所職員の「勉強会」から始まって、年に一回の制度化された「職員研修」が行われ、他大学からも技術官の参加を得て、かなりの成果を上げて来ました。この度あえて、新たな「研修制度」を発足させる背景としては、

  1. 共同利用研への改組から4年が経過して、研究業務の増大に教官*1・技術官共に十分対応しきれていない面がある
  2. 「職」の制度が導入されたが、技術官の技能を、所として統一した基準で、積極的に評価するシステムが無かったため、他部局に比べても、技術官の待遇改善に遅れを取る恐れが出てきた
  3. 数年後に実施される省庁再編で、大学附置研の教官や、とりわけ技術官の処遇がどうなるか、予断を許さない
という事情があります。

研修の形態としては、従来から行われている「全体研修」を一層充実させると共に、数人以上で行う「グループ研修」と、個人で技能や資格を取得する「個人研修」があります。「全体研修」と「個人研修」は、通常業務を離れた研修(FJT : oFf the Job Training)です。運営委員会としては、日常業務の中で、個人や地震研全体の技術レベルを向上させるような成果も、「研修」として認定し(OJT : On the Job Training)、これを積極的に支援する考えです。具体的には、html言語を習得し、その普及指導を通じて、地震研のホーム・ページを充実させるとか、観測や実験に新しいやり方を導入して、それを「標準装備」として普及させる、等があります。

また予知計画の一環などで実施される全国共同観測は、共同利用研としての地震研が、世話係の役割を期待されています。それに技術官が、各人の専門を越えて参加することも、応援します。これは技術官の経験を広げることが出来る上に、共同観測を企画する教官にとっても、「即戦力」としての技術官の参加はメリットが大きい、そして1)にあげたような、共同利用研化に伴う業務増加に、部門・センターの壁を越えて対処するひとつの方策である、と考えるからです。このことを実現するために、主任・センター長および教官の皆様の、理解と協力をお願いいたします。

「グループ研修」・「個人研修」を希望するグループまたは個人は、「研修申請書*2」を研修運営委員会に提出します。そこで了承された研修は、研修運営委員会のもとで行われます。またこの研修が終了した段階で「研修報告書」を提出して頂きます。またなるべく、「技術発表会」(「全体研修の際や年数回談話会に続いて開くことを予定)や「技術報告」の末尾に技術業務報告として、その成果を発表して頂きます。

研修運営委員会は、研修成果の評価は行いません。ただし「所としての研修」という性格から、地震研の研究教育活動にどのように役立つかという視点で、申請と報告をしてもらいますから、それが結果として「評価」につながることはあります。

新研修制度を打ち出した、山下技術検討委員長の方針にありますように、この制度は将来的に、技術官によって自主的な運営がなされることを、目指しています。このことを念頭に置きつつ、当面は技術官からはもとより、教官や事務部からの様々な提案や要望を調整して、中身のある「研修」を行いたいと思います。皆様のご協力をお願いいたします。

すべての技術官、および研修を希望する助手*3の方に「研修」への参加を呼びかけます。


注釈
*1 平成16年に国立大学法人化され国家公務員ではなくなったのに伴い,職名が「教官」,「技術官」から「教員」,「技術職員」に変更されました.
*2現在は「研修計画書」という名称になっています.
*3 平成19年の教員職階の改正により,「助手」は「助教」と「助手」になりました.


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