令和元年度地震研究所職員研修会報告

研修運営委員会

令和元年度地震研究所職員研修会を令和2年1月22日(水)~24日(金)の3日間にわたり開催しましたので,ここに報告いたします.

1.研修会の概要

 本研修会は主に「技術発表」・「所外研修」・「特別講演」の3つから成っており,技術発表を1日目と3日目に,所外研修を2日目に,そして特別講演を3日目に開催しました.

 <1日目> 開会式に引き続き,技術発表(口頭発表5件)を行い,会場を移動して参加者全員で記念撮影を行いました.その後,技術発表(ポスター発表9件).地震火山災害予防賞の表彰式(受賞者:宮川幸治氏)と受賞記念講演が行われました.初日の研修終了後には,懇親会を催しました.

 <2日目> 所外研修として,午前中は清水建設技術研究所(東京都江東区)を訪問しました.そこでは,研究員の方から最初に研究所の概要をご説明いただき,その後,3班に分かれて所内施設を見学しました.最後に,研究員の方に,ご講演(建設会社におけるビル風の検討について)をして頂きました.午後は,東京臨海広域防災公園の防災体験学習施設「そなエリア東京」(東京都江東区)を訪れました.そこでは,防災士の方からワークショップ(身のまわりにある生活用品を使った応急対応の紹介)を実施して頂きました.その後,防災施設の体験や被災時の対応に関する学習を行いました.

 <3日目> 初めに,技術発表(口頭発表4件)を行いました.続いて,平田直教授(東京大学地震研究所)による特別講演を行いました.最後に,東北大学の堀川信一郎さんと地震研究所の竹内昭洋さんに,それぞれ所内外を代表して修了証書を授与し,研修会を終了しました.

 本研修会への事前参加申込者,つまり所外研修を含む3日間全ての研修に参加をご希望された方々は35名でした.内訳は,所内からが19名で,他大学からが16名でした.しかし,体調不良により途中不参加となられた方もいらっしゃいました.この他にも,所内外の多くの方々が懇親会に参加され,また特別講演を聴講されるなど,3日間の延べ参加人数は120名以上となりました.

2.アンケート回答概要

 研修会では更なる改善を目指して毎年参加者にアンケートをお願いしています.今回は27通の回答をいただきました.アンケートにお答えいただいた皆様に感謝申し上げます.ここでは要約してご紹介いたします.

 問1では,研修会の内容を項目別に5段階で評価していただきました.全ての項目(「口頭発表」・「ポスター発表」・「所外研修」・「特別講演」・「全体」)で概ね高評価をいただきました.その中でも特に口頭発表と所外研修,特別講演の評判が良かったようです.今年度はラウンジの改修工事のため,いつもと異なる会場を使用しましたが,うまく工夫して対応しており,スムースな運営であったとお褒めのお言葉もいただきました.

 所外研修では,清水建設技術研究所および,そなエリア東京を訪問し,主に体験型の研修を受けました.アンケートでは地震や防災関連の広範囲な知見を得て有意義だったとのご意見もいただきました.一方で,所外研修は,各自で公共交通機関を使って移動していただきましたが,時間が足りなかったり,移動が面倒であると感じられたりした方もいらっしゃいました.

 特別講演では,平田直教授に「地震研究での「観測」の役割 : 現状と展望」というタイトルでご講演いただきました.アンケートでは,地震観測について意義と歴史を話していただいたこと,過去から現在までの研究で使用された地震計やロガーをご紹介いただいたこと,これからの地震観測についての展望についてお話いただいたことなどに高い関心が寄せられました.

 問2-3では,次回の参加予定と開催時期の要望をお伺いしました.大多数の方々が次回も参加していただけると回答して下さいました.また開催時期についても例年同様に1月下旬の水-金曜日(3日間)の日程をご希望されました.ここ数年,この時期に開催するのが慣例となっております.地震火山に関わる大半の技術系職員にとって1月は比較的,野外活動の少ない閑散期にあたり,3日間の長期にわたって開催される本研修会にも参加されやすいのだと思います.その他の意見として,春から夏にかけての開催を希望するご意見もありました.

 問4-6では,2日目の研修のあり方,および希望される所外研修の訪問先や所内研修の研修内容をお伺いしました.大多数の方は,例年同様の所外研修を望んでおられるようです.また,具体的な訪問先と研修内容について,気象庁や宇宙航空研究開発機構(JAXA),首都圏外郭放水路,東京都庁(防災関係の部署),その他多くの研究所や施設が希望されました.これは,皆様の業務の幅や興味の方向性が多岐にわたるが故だと思われます. 所内研修としては,運転技術,OPアンプ講習,ノイズ及び雷の対策,ネットワーク関係,その他多くの項目が挙げられました.

 問7では,ご希望される特別講演の講師や内容についてお伺いしました.講師については,地震研究所の教員が複数名挙げられました.また,猪や熊の生態・習性について話を聞きたいというご意見もいただきました.

 問8では,発表された方に,気が付いた点や,アブストラクトテンプレートへのご意見を伺いました.今回よりアブストラクトのテンプレートをご用意いたしましたが,良い評価をいただきましたので,継続していきたいと考えています.

 問9では,その他のご意見等をお伺いしました.多くの感謝のお言葉をいただきました.また,加湿器があると良いというご意見をいただきました.空気が乾燥するためインフルエンザや風邪が流行する季節でもあります.また,今年は新型コロナウイルスの感染拡大が社会問題になりました.これらのご意見を参考に対策を講じ,更に充実した研修会を目指していきたいと考えております.

3.研修会を終えて

 本研修会では,所内からの参加のみならず,北海道大学,東北大学,名古屋大学,京都大学,高知大学,九州大学,鹿児島大学,そして気象庁よりご参加いただきました.3日間の研修を通して,研鑽し,情報を交換し,親睦を深めることができ,大変貴重な機会となりました.ここ数年において,所外からの参加者は,全参加者のほぼ半数を占めています.これは,地震研究所が全国共同利用・研究拠点として,その役割を果たしていることの1つの証左ではないかと考えております.

 今回の研修会への参加者内訳を見ると,昨年度に比べ所内からの参加者が少し増えました.これは,テレメータ室やアウトリーチ室からもご参加いただいたためです.発表においても,観測データの流通やアウトリーチに関係する発表が複数ありました.本研修会も,時代の流れに併せて新たな役割を担えることになりそうです.

 団塊の世代の退職や定員削減の影響もあり,本研修会の全日程参加者の総数は年々減少する傾向にあります.一方で,ここ数年において,口頭・ポスター発表の件数は全日程参加者の5割前後を維持しており,参加者はおよそ2年に1回の頻度で発表していることになります.ただし,毎年発表している人もいますので,多少のばらつきはあるでしょう.本研修会は,専門部会や学会とは違い,自由に技術や情報共有,問題提起の出来る場ですので,参加者の皆様には,気負わず積極的に発表していただきたいと思います.

 技術発表に関して,今年度はFPGAやRaspberry Piの活用, ドローンに搭載するロガーの開発, VRやマグマ実験などの実演,最先端技術を取り込んだ各種観測や,試料採取とその分析,顕鏡試料作製など,大変幅広い話題提供となりました.異なる分野の業務においても大いに参考になるものと思います.運営側としましては,今後も幅広い分野の方々がご参加・ご発表しやすくなるよう環境を整え,展示や実演などの試みにも柔軟に対応していきたいと考えております.

4.謝辞

 本研修会への職員参加につきましてご賛同及び格別のご配慮をいただきました各施設長の皆様,開催期間中の業務につきましてご配慮いただいた所内教員の皆様,特別講演の依頼を快くお引き受けいただいた平田直教授,事務手続きや受付・修了証の発行等でご協力いただいた事務部・研究事務支援室の皆様,所外研修でご対応いただいた各施設ご担当者の皆様に,この場をお借りしてお礼申し上げます.また,今回ご参加の皆様につきましては,次回以降も積極的にご参加・ご発表をしていただきますよう重ねてお願い申し上げます.地震や火山に関わる全国の技術系職員や省庁・研究所職員が普段の業務活動で得られた知識や経験を共有する場として本研修会が活用されれば幸いです.

5.参考資料


※ 令和元年度 研修運営委員 ※

平賀 岳彦(運営委員長) ・ 前野 深(運営副委員長) ・ 田中 伸一(実行委員長) ・ 阿部 英二(実行副委員長) ・
内田 正之 ・ 宮川 幸治 ・ 上原 美貴 ・ 佐伯 綾香