深海底掘削孔内地震計による海域地震観測
なぜ海底での観測が必要なのか
 地球内部の様子を正確に調べるためには、地表の約7割を占める海域での観測が重要な役割を担います。
 海域には工場や道路などの陸域観測の際に障害となるノイズ源はほとんどありませんが、海水の流れなどの別の問題があります。このような問題を軽減するために、孔(あな)を掘って地震計や地殻変動観測装置(歪み計・傾斜計)を計4点(JT1/JT2/WP1/WP2)設置しました。海域下の観測点構築の際には、厚く覆う海水の影響で技術上さまざまな困難な点がありますが、既にデータの取得に成功しています。
これらの海底掘削と観測装置の設置は、国際共同研究
である「国際深海掘削計画(ODP)」に基づき、海底深海
掘削船ジョイデス・レゾリューション号(JOIDES・Resolution)
号により行われました。
現在の連続観測点(西太平洋)
 オレンジ色の丸印が海底の、黄色
の丸印が陸上の観測点です。これを
見てもわかるように、海底の観測点
の数は陸上に比べてまだまだ不足し
ています。新たな観測点の設置は、
陸上に比べて予算・日程の制約があ
り、簡単ではありません。
 しかし最近、新しい海底掘削船『ちき
ゅう』が完成し、観測点の充実が期待
されています。
これまでの観測状況
ジョイデス・レゾリューション号
● JT1 (日本海溝陸側斜面) 歪・傾斜・地震複合観測
  2002年7月から観測を開始しました.2003年の6月にデータが回収される予定です.
● JT2 (日本海溝陸側斜面) 歪・傾斜・地震複合観測
  2002年9月から約2ヶ月半のデータが得られています.
● WP1 (西フィリピン海盆東部) 広帯域地震観測
   2002年3月の航海でシステムを起動、その後10月の航海で約6ヶ月分のデータの回収に成功しました。
● WP2 (北西太平洋) 広帯域地震観測
   2002年6月の航海で、約330日間(2001年7月〜2002年6月)のデータ取得に成功しました。海底掘削孔内でのこのような長期間の連続データを取得したのは世界でも始めてのことです。
これらの観測地点にはそれぞれ海底ステーションが設置されており、装置の起動やメンテナンスは海洋科学技術センター所有の遠隔無人操作船(ROV)を用いて行われています。
かいこう
一万メートル以上潜ることができる無人潜水艇です。左側は母船であるかいれいから投入されるときの写真です。深海底に到達すると右側の写真のようにランチャーからビークルが切り離されて作業を行います。操作はかいれいの上から光・電力複合ケーブルを通して行われます。
かいれい

船の後部に上の写真の「かいこう」
を格納しています。全長約105m、
幅16mで、総トン数は約4600トン
です。かいこうの他にも、マルチチャ
ンネルストリーマーやプロトン磁力計
などを搭載しており、海域での様々な
調査・研究に使用されています。

海底孔内広帯域地震観測所海底部

「かいこう」から撮影した、海底に設置された観測基地です。これはWP-2の海底ステーションで、この下に約500mの掘削孔があり、地震計が設置されています。基地には電源である海水電池やリチウム電池、データを記録するためのハードディスクが入ったチタン球などが設置されています。
このページは,地震研究所大学院生有坂道雄くんが作成しました.(2003年4月)