平成19年度 第1回 海溝型地震調査研究運営委員会 議事録 

 

1.日 時  平成19102日(火) 1330分−1730

 

2.場 所  東京大学地震研究所1号館 会議室

 

3.出席者                  

委員長   本蔵 義守 東京工業大学副学長

委員長代理 金沢 敏彦 東京大学地震研究所教授

委員    海野 徳仁 東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究センター教授

      小原 一成 防災科学技術研究所地震研究部副部長

      金田 義行 海洋研究開発機構海洋工学センター

海底地震・津波ネットワーク開発部部長

      高波 鐵夫 北海道大学大学院理学研究院准教授

      長谷川 昭 東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究センター教授

      清水 洋  九州大学大学院理学研究院地震火山観測研究センター教授

      藤本 博巳 東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究センター教授

      田所 敬一 名古屋大学大学院環境学研究科地震・火山防災研究センター准教授

      谷岡勇市郎 北海道大学大学院理学研究院地震火山研究観測センター准教授

      津村建四朗 地震予知総合研究振興会地震防災調査研究部副首席主任研究員

      上垣内 修 気象庁地震火山部管理課地震情報企画官

      橋本 学  京都大学防災研究所地震予知研究センター教授

      中川 弘之 国土地理院測地観測センター国土交通技官・地震調査官

      平田  直 東京大学地震研究所教授

      松本 良浩 海上保安庁海洋情報部技術・国際課海洋研究室 主任研究官

(代理出席佐藤まりこ)

      堀  貞喜 防災科学技術研究所地震研究部部長

オブザーバー

      石関 隆幸 文部科学省地震・防災研究課本部係長

      小河原隆広 文部科学省地震・防災研究課地震調査官

      友利 敏宏 気象庁地震火山部地震津波監視課災害調査解析係長

      白土 正明 気象庁地震火山部地震津波監視課調査官

      田中 昌之 気象庁地震火山部地震予知情報課調査官

      山崎 明  気象庁気象研究所地震火山研究部主任研究官

      篠原 雅尚 東京大学地震研究所准教授

      根岸 恒夫 東京大学地震研究所研究支援チーム係長

      中東 和夫 東京大学地震研究所研究員

      志賀 恵子 運営委員会事務局

 

議事概要

 委員の出欠並びに配付資料を確認した。本蔵委員長の下、議事を進行した。

 

議 題                                                                               

T.全体計画について                           (文部科学省)

 東南海・南海地震に関する調査研究が最終年度であり、これまでに得られた成果をとりまとめする必要があるというコメントが出された。

 

U.海底地殻変動観測の高度化(報告)

1.セミリアルタイム海底地殻変動連続観測に向けたシステム開発(東北大学大学院理学研究科)

 これまでに実施されたシステム開発、研究結果が配付資料により報告された。水中音速場の決定手法の改良を行った事により測位精度が向上することが説明された。また、今後は海底間の音響測距と海底差圧観測を組み合わせることによって、局所的な変動も検出可能になるということが説明された。セミリアルタイム連続観測に向けた観測機器開発を進めていることが報告された。

 

2.海底GPS観測システムにおける繰り返し測位精度の向上と広域多点観測の推進

                                                     (名古屋大学大学院環境学研究科)

平成19年度に実施した観測、研究の結果が配付資料により報告された。海中の音速構造推定の精度を上げるために、曳航式水温・水圧計で得られたデータを用いて音速構造を求めたことが説明された。今後は短周期のばらつきを取り除くための検討を行う事が説明された。また、準リアルタイム解析へ向け異なる暦を用い、キネマティック解析を行ったところUltra-Rapidで十分な精度が得られることが説明された。熊野灘で繰り返し観測を行った結果、誤差3cm程度で変位を決めることが出来たことが報告された。

 

V.東南海・南海地震に関する調査研究−予測精度向上のための調査研究

1.プレート形状等を把握するための構造調査研究                      (海洋研究開発機構)

これまでに行ってきた地殻構造探査について配布資料により報告された。平成18年度は熊野灘−紀伊半島海陸統合調査を行い、沈みこむ海洋性地殻内に断層が見られることが説明された。構造探査実験でみられた海洋性地殻およびモホ面下の反射面がプレート内地震の構造要因の可能性があることや、広角反射データから分岐断層が明瞭にイメージングされたことなどが説明された。平成19年度は東南海地震-東海地震震源域で構造探査を行うことが報告され、了承された。

 

2より正確な地震活動を把握するための海底地震観測研究       (東京大学地震研究所)

  昨年度までに得られた走時データを用いて震源決定を行った結果が配付資料により報告された。潮岬沖の海域ではトラフ軸付近まで地震活動が見られ、東南海・南海地震境界域での地震活動度が高いこと、深さ方向では沈みこむ海洋地殻内から上部マントル内で地震活動が見られることが説明された。平成19年度の観測はこれまでの解析結果をふまえ、観測領域を四国海盆北縁までに広げ、計27台の海底地震計を用いて観測を行っている事が報告され、了承された。

 

2-1.想定震源域および周辺における地殻構造と地震活動の対比等に関する研究

(九州大学大学院理学研究院)

 平成19年度の観測、研究計画が配付資料により報告された。これまでに、長期海底地震観測への参加、データ処理などを分担したことが説明された。今後、起震応力場の空間分布の把握と、地震波速度構造と重力異常データを用いた密度構造の推定を行って行く予定であることが説明され、了承された。

 

3.その他の調査研究

3-1自己浮上式海底地震計のデータを用いた震源決定               (気象庁)

 平成17年、18年度に紀伊半島南方沖で実施した短期型海底地震計を用いた観測の結果が配付資料により説明された。上部マントル内での地震活動度が高いことなどが説明された。平成19年度は潮岬南方沖で短期型海底地震計9台を用いた観測を実施予定であることが報告された。

 

3-2潮岬沖海域における海底地殻変動観測                  (海上保安庁)

 これまでに行われた5回の観測、解析結果が配付資料により報告された。東海沖の海底基準点で年間2.9cmの水平変位が得られ、この値は陸上GPS観測点データなどから推定される値と調和的であることが説明された。平成19年度の観測は予定通り実施され現在解析中であることが報告された。これに対して観測を昼と夜に実施することによる海中音速構造決定への影響はないのか、などが議論された。

 

3-3南海トラフ沿いのGPS連続観測点設置計画について            (国土地理院)

 GPS連続観測点設置計画について配付資料により報告された。平成18年度はGPS観測点を紀伊半島に2点増設し現在稼働中で、平成19年度は四国東部に2点、紀伊半島南部に3点増設予定であることが説明された。また、高知県で水準測量を行う予定であることが説明された。

 

3-4四国西部におけるアレイ観測について              (防災科学技術研究所)

四国西部において、スロースリップの発生機構、すべり過程を明確にするために実施する集中観測について配付資料により報告された。人工地震探査、広帯域地震計による長期機動観測、短周期地震計による稠密機動観測、短スパンアレイによる長期機動観測などが実施予定であることが説明された。

 

4.その他

なし。

 

W.日本海溝・千島海溝周辺の海溝型地震に関する調査研究

1.より正確な地震活動を把握するための海底地震観測研究      (東京大学地震研究所)

これまでに日本海溝・千島海溝で行ってきた長期海底地震観測と解析結果について配付資料により報告された。海底地震計データを使用して震源再決定を行った結果、これまで観測を行ってきた領域では、定常的な地震活動はアスペリティの周辺に見られること、根室沖では震源が太平洋プレート上面付近に分布することなどが説明された。また、今後はメカニズムの情報を使用した解析を行う予定であることが説明された。平成19年度の観測は三陸沖・宮城沖で49台の長期観測型海底地震計を用いて観測を行う予定であることが報告され、了承された。

 

1-1.プレート境界及びその周辺域の3次元地殻不均質構造の推定(東北大学大学院理学研究科)

 平成18年度に根室沖で実施した海底地震計データを陸上地震観測網のデータと統合し、地震波トモグラフィー解析を行った結果が配付資料により報告された。北海道東部では沈み込む海洋性地殻に対応する低速度層が深さ100km程度まで確認されること、島弧側マントルウェッジ内の地震波速度構造には顕著な低速度異常は見られないことなどが説明され、了承された。また、今後十勝沖余震観測データなどを加え、解析領域を広げる必要があるということも議論された。

 

1-2.アスペリティ周辺の地震活動の特性に関する研究    (北海道大学大学院理学研究院)

 平成17年度に青森沖北部で実施した海底地震観測と陸上観測網の地震データを統合解析した結果が配付資料により報告された。地震活動の時間変化を調べたところ、襟裳岬浦河沖で地震活動の静穏化がみられたこと、定常的な地震活動はアスペリティ周辺に限られることが説明された。また、平成18年度に実施した根室沖での地殻構造探査は現在解析中であることが報告され、了承された。

 

2.過去の地震活動などの調査                (東北大学大学院理学研究科)

 すす書き記録を用いて1933年三陸沖地震の震源再決定を行った結果が配付資料により報告された。再決定後の震源から1933年三陸沖地震はプレート内地震であること、本震後に本震の活動に誘発されたと考えられるプレート境界の地震活動が見られることが説明され、了承された。

 

3.広帯域高ダイナミックレンジ孔井式地震計の開発         (防災科学技術研究所)

これまでの高感度加速度、傾斜計の開発について配付資料により報告された。各部材に熱処理を施すことによって、計測機器の初期ドリフトを取り除くが出来るようになったことなどが説明され、了承された。

 

4.その他の調査研究

4-1自己浮上式海底地震計による観測                      (気象庁)

 平成19年度の自己浮上式海底地震計による観測計画について配付資料により報告された。三陸沖で自己浮上式海底地震計を用いた観測が実施済みであること、宮城沖では実施中であることが説明された。

 

4-2日本海溝における海底地殻変動観測                   (海上保安庁)

平成19年度の観測、解析結果について配付資料により報告された。日本海溝沿いに設置している全ての海底基準点において観測を実施し、解析の結果、福島沖の海底局で年間2.9cmの西方への変位が見られ、これは太平洋プレートや宮城沖の海底局の速度と比べ有意に小さいことが説明された。

 

4-3日本海溝・千島海溝沿いのGPS連続観測点設置計画等について       (国土地理院)

 GPS連続観測点設置計画について配付資料により報告された。平成18年度宮城県に5点、福島県に1点のGPS連続観測点を設置したのに引き続き、平成19年度は青森県に1点、岩手県4点、福島県に2点、茨城県に1点の設置を予定していることが説明された。また、宮城県仙台市から牡鹿半島にかけて水準測量を実施中であることが報告された。

 

5.その他  なし。

 

X.その他  なし。