第2回 11月27日講義分。 
内容: Sect 1.3-1.4 (Single Layer/Double Layer/Greenの定理 の応用4 まで)
          QA作成所要時間(3時間)(備忘)

内容に関するQ

A

 【上方接続】
上方接続式を用いて外部のポテンシャルを計算しようとする時、表面上で与えるべき点はどれくらいの間隔にすれば十分な精度がえられるか?(増田)

3回目の講義で実例がでてきます。
 【等価原理と負の質量−1】


質量が正であっても負であってもFとαの符号が同じであり、m>0のときF>0かつα>0で、向きはどちらも地球中心向きなのだから、m<0のときF<0かつα<0でFは地球外向きだから、地球外部向きとは考えられないか(M)


質問の意味がよくわからない。
座標系として r>0を地球中心から遠ざかる向きにとる(普通の球座標系)。
正の質量のとき(図の左)、Fは負ととるべきではないでしょうか?(引力、地球中心向き)このとき、αも負となります(地球中心向き)ので、落下することになります。
負の質量のとき(図の右)、万有引力の法則からすると負の重力質量は斥力(地球の外向き)を受けるので、Fの符号は正。 運動の第2法則 F=mα から、右辺mαも正。mが負だから、αも負(地球中心向き)。この場合も落下することになる。
 等価原理と負の質量−2】
負の質量の物体Aのつくるポテンシャル下に、正の質量の物体Bを置いたら、物体BにはAから離れる方向に力がはたらくのではないかと思いますが、それは等価原理の話と矛盾しませんか?(山浦)
Bにはたらく力の向きはAから離れる方向でよいです(斥力)。Bの質量は正なので、Bの加速度はAから遠ざかる方向にはたらきます。特に矛盾はないと思いますが。
 【Greenの定理応用1】
レジュメ1−11のpの値について。
積分領域が直方体で、rが直方体頂点にあるときは、pの値はπ/2になりそうですが、この場合は法線ベクトルnが定義できないためにグリーンの定理も応用できないという解釈でよいでしょうか?(久河)

その理解でよいです。 
閉曲面は滑らかであることを要請しています。そうしないと∂V/∂nが定義できないところが出来てしまいますから。
 【Greenの定理応用1】
補題1.5.2は右辺第3項は、被積分関数がO(1/R3)
であるため、面積分してもO(1/R)となり、無限遠でゼロになるという理解でよいか?(久住)
その理解でよいです。 
 【Greenの定理応用2】
V(R)=1の仮定で導いた公式を導いていますが、V(R)=1というのは地球物理的にはどういう場合があるのかと思いました。(山名)
V(R)=2でも3でもいいのですが、要するに面S上で一定値という場合です。応用4で使われますが、たとえば惑星全体が液体で覆われたとき、その表面のポテンシャルは一定値になります。一定でないなら、面に沿って力がはたらくことになるので、表面に「いかだ」を浮かべると、その力で動いてしまいますね。 
 【Greenの定理応用3】
1.5.4式右辺の説明で、「∂V/∂n(R)/|r-R|の∂V/)∂n(R)を密度だと思う」という言い回しがあったが、意味がつかめなかった(岡)
簡単な例で説明しましょう。半径aの球形の物体があって、その外側の引力ポテンシャルがV(r)=GM/r と分かったとしましょう(r は動径距離)。このとき、物体の内部の密度分布ρはどうなるでしょうか?もちろん、一意には決まりません。無限に可能性があります。その中の一つとして、中が中空で、表面に質量とダイポールが集中したモデルが可能ですよということです。では、そのときの質量の面密度κはどう、選んだら良いでしょうか?その処方箋を与えているということです。実際、
 - (∂V/∂n)|S /(4πG)を計算してみるとGM/a2 /(4πG)=M/ (4πa2)が面密度となります。そう、全質量Mを面積(4πa2)で割り算しているので、ちゃんと正解になっています。
 任意の形のポテンシャルについても、「同様の処方箋で面密度(とダイポール密度)とを与えると、ちゃーんと外部のポテンシャルが再現できますよ」ということです。
 【Greenの定理応用3】
引力ポテンシャルが薄膜と二重層とで表現できることは分かりましたが、計算上の便宜的なものでしょうか?ダイポールは現実的ではないように思います。(加藤、中山)
負の質量が存在しないということから、2重層も存在しないと思えば、重力ポテンシャルについても逆問題が非一意といえるのはなぜですか?(彦坂、横尾)
引力ポテンシャルに限定するなら、計算上の便宜的なものといってもよいし、現実的ではないということも、そのとおり。ただ、今の議論は調和関数としてのポテンシャルを議論しているので、磁気ポテンシャルについて、静電ポテンシャルについても理論は成立します。これらの場合、ダイポールは実体をもちますから、「ポテンシャル論」としては有益かつ、現実的だと思います。 
 【内部の密度】
外部重力場から内部密度構造を推定する方法を具体的にしることができた。他の惑星も成層構造になっているというが、同じ方法ですか?それとも仮定?(池端)

ガス惑星の場合、地震波観測はできませんが、どのように密度構造を推定しますか?(冨田)
天体内部の密度分布を推定するには、地震計情報が必須と考えて良いでしょうか?それともほかに方法があるでしょうか?(横田)
 地球の密度の場合は、自由振動の周期も使います。他の惑星については、多分、まだ仮定ではないかと思います。

ガス惑星ではないけれど、太陽の密度分布は、太陽の自由振動周期(5分振動など)を観測して(多分、ドップラー?)、決めます。地震学ではなくて、日震学というものがあります。

厳密には地震計なしでも可能です。たとえば、地震研究所でも始めたニュートリノの透過率をはかれば、可能です
(反応が少ないので、時間はかかるでしょうが・・・)。
 【Greenの定理応用4】
水惑星とは、等ポテンシャル面の例ということですか?(久住)


地球にあてはめると、等ポテンシャル面がジオイドに相当し、∂V/∂nが地球の引力に相当するという理解でよいでしょうか?(西山)
はい、そうです。惑星の表面が固体だと等ポテンシャル面にならないことがありますね

地球の場合、表面の3割が固体なので、等ポテンシャル面になっていない部分があるということです。
 【Greenの定理応用4】
ジオイド上で引力が一定とは限らないということ
を、(1.5.5)式から説明することができますか?(西山)
非常に面白い問題設定です。
仮に、引力 ∂V/∂n= -g0 (一定 on S; g0は正の一定値)としてみましょう。面S上では、ポテンシャルVも一定値V0となっています。

すると、(1.5.5)式右辺の被積分項は積分の外に出せるので、
 V(r) =- [g0/(4π)]∫1/|r - R| dS
が要請されることとなります。言い換えれば、面S上に勝手に2点12とをとったとき、いつでも
  ∫1/|1 - R| dS(R)=∫1/|2 - R| dS(R)
が成り立つことが、面Sに要請されます。Sには相当に強い対称性が要求され、球面以外では一般に成り立たない条件になっています。

  【惑星の重力場】
グリーンの定理の応用例では、境界条件を与えて積分形式で外部重力ポテンシャル等を求めていますが、実際の惑星探査では探査機を表面で走らせるしかないのでしょうか?(実際にそのようなミッションが行われた事例は聞いたことがないのですが)(湯本)
他の惑星・衛星ではないと思います。地球上では、細かい間隔で測った重力値をもとにポテンシャルや等ポテンシャル面 (ジオイド)の形をきめるということは、よく行われてきました。

 その他のQや感想  A
【Greenの定理】 
・上手にU,Vを選んで式変形すると、様々な物理的に意味のある数式が導けることが興味深かった(水越)


外部の任意の点でのポテンシャルがわかっても、物体内部の密度が一意に決まらないこと興味深かった(西貝、 横山)

・ まっとうな感想ですね。