第4回 12月11日講義分。 
内容: Sect 2.3-2.5(Stokes係数、正規重力 まで)
          QA作成所要時間(2時間)(備忘)

内容に関するQ

A

基準面
・橋がずれた話。どこでも良いので世界共通の基準を用意して、皆がそれを利用して仕事をすればよいと感じました。そのようにしなかったのは何か不都合があったのでしょうか?(中山)

・なぜ日本は2001年に至るまで、測地緯度・経度が世界とずれているのを放置したのでしょうか?300mもずれていると支障があると思うのですが(池端)
もっともな質問です。でも、我々は歴史を引きずっているということも思い出してみましょう。日本が近代的な測量を導入したのは明治時代で、測量は道路整備・治水事業・都市計画等の近代化を進める上で不可欠だったという背景もあります。当時は、日本の外の世界の座と、我が国固有の座標とがずれていても問題は生じなかった。船の航路(海図)にしても、まあ数百mずれていても困らなかったでしょう。しかし、1990年ごろになって、GPSが普及し、船も飛行機もそれを使うようになると、海図の座標系がちがっていると座礁等の事故を引き起こすし、飛行機のオートパイロットではあぶなくてしょうがない。
 というわけで、1990年代〜2000年ごろに問題が顕在化し、それを一気に世紀が変わるときに解消したということです。
 平均海面
・ 標高の基準となる平均海面はどのように決められているのでしょうか?(湯本)
・ 基準に出来るほど安定なのでしょうか?(加藤)
・ 海岸で潮位をはかる験潮所(検潮所)で、季節変動が取り除ける程度に長期間観測して決めます。
・ 実用上の安定性は問題があるでしょうね。海面自体が温暖化で熱膨張したり、海流・渦で海面高が変化します。 
 ジオイド面
ジオイド面は等ポテンシャル面の中の特殊な一つと考えて良いですか?(彦坂)
・ そう考えてよいです。 
     【J2の時間変化-1】
氷河の融解がおもな原因だと、なぜわかったのか?(水越)

 。正確には、「主な原因だと信じられている」ということ。マントルの粘性率をいろいろ試行錯誤的に試してみて、そのときに期待される密度分布、重力ポテンシャル変化を説明できるようなモデルが作れたということですね。
   【J2の時間変化-2】
地球の粘性以外のより短周期の現象があるでしょうか?(加藤)
 あります。陸水の移動とか季節的な変動。また、原因不明の変動もあります。
【 水準測量-1、 等ポテンシャル面】
・ 街中でみかけるような測量も重力加速度まで測定して、正確におこなっているのですか?(横田)

・地球表面付近の等ポテンシャル面はどれくらい歪んでいるか?地域によって、偏りがあるか?(西貝)
・ 標高差を求める2地点の間の距離が短い時は、ポテンシャル面の曲がりが小さいので、重力補正は不要でしょう。しかし、日本海側から太平洋側へと300km 横断するような測量をするときなどは、必要でしょう。(中部山岳でポテンシャル面が,5m盛り上がっているので、補正しないと10kmで20cmの誤差がでることがあるはず)

・ 世界的にみると±100mの凸凹。詳しくは2.6章あたりで。
 【 水準測量-2】
ΔH=(Σgi ・Δhi)/g(bar)
としましたが、
分母として、平均的な重力で割り算するのですか?(岡)
簡単のため、配布した図「水準測量」で、HA=0としましょう。点Aがジオイド上にあるとしたわけです。Bからジオイド面に垂直投影した点をB´とすると、
BB´ = HB。 BとB'の間の重力の平均は、「平均」の定義により
 【1次の禁止項】
C10=C11=S11=0とするためには、惑星の重心をまず測って求める必要があるのでは?(久住)
 重心が見えなくては困るのではないかということでしょうか?
そうではなくて、衛星軌道の解析をするときにC10=C11=S11=0という拘束条件を課すことで、解析者の使っている座標系の原点が重心となることが保証されるということです。
 【高次の禁止項】
禁止項はこれ以上はないのですか?(楠)
 ・ありません。
 【重力ポテンシャルの高次の項】

・ 3次以上の項は物理的意味があるというよりは、低次項からの微小なズレを表しているととらえてよいですか?(芋生)

・ 高次項にもMacCullarghの定理みたいなものはありますか?(山浦)

・ 3次以上の項の扱いが気になった。物理的意味が与えづらいというのは聞こえたが・・(左高)
・ 3次以上の項の寄与はどれくらいですか?(坂倉)

・重要な項として、C20,C21,S21,C22,S22だけで、重力ポテンシャルをどの程度の精度で記述できるでしょうか?(久河)
・芋生さんの考えでOKです。MacCullarghの定理みたいな対応については、聞いたことはありません(※ 密度に(3次形式)をかけて積分するような力学量があれば、対応づけられるでしょう)。

・ 3次以上の項の効果は、J2とJ3の 比が | J3/J2| 〜 0.002 。
     【Jn
Jnはどのようにして、どのような基準で計測、計算しているのでしょうか?基準はたとえば標高、重力、楕円体などあると思いますが・・(冨田)
 人工衛星の軌道解析が正確でしょう。一番わかりやすいJ2は、人工衛星の軌道面が歳差運動することから導けます(軌道面に直交する法線ベクトル=軌道軸が、地球の極軸のまわりに味噌すり運動する。)。軌道要素ごとに与える影響がJnで違っているので、軌道解析から分かるはずです。
高さ-1
GPSで測れるのは楕円体高で、標高は測れないということでしたが、ではGPSを用いた機器で表示される標高は緯度・経度情報をもとに、既知の地図情報を参照した値となっているのでしょうか?(荒尾)
緯度・経度が与えられれば、その点のジオイドが、楕円体からどれだけずれているか分かります(後の章で解説)。その情報を補正に使うと、原理的には標高が出せます。
高さ-2
「楕円体高の低いA点から、楕円高の高いB点へ水が流れることがある」というのが、よくわかりませんでした(三木)
等ポテンシャル面(ジオイドでも可)が、Aのところでは凹んでいて、Bでは盛り上がっている場合。

 その他のQや感想  A
・いろいろな量が等ポテンシャル面の影響を受けていますが、直接観測できる量で、補正などをせずに信頼できるものはないのでしょうか?(横尾) ポテンシャルとは無関係に座標を決めるということは、原点が重心とは一致しないことを許すということになります。