第5回 12月18日講義分。 
内容: Sect 2.4-2.5(正規重力)
          QA作成所要時間(2時間)(備忘)

内容に関するQ

A

 【エリプソイド座標-1】
P点を通る垂線が、外側の球(半径(u2+E2)1/2に交わる点P’を考えて、P’とz軸の間の角度が、エリプソイド座標の余緯度になるということがわからなかった(岡)
点Pと点P´のデカルト座標を、(XP, YP, ZP)と(X´P, Y´P, Z´P)としましょう。
エリプソイド座標とデカルト座標の関係を定める式(2.4.1)から
(XP, YP)= (u2+E2)1/2 (sinθcosλ, sinθsinλ)・・(1)
ZP= u cosθ 
となります。
一方、P´はx軸から立てた垂線上にあるので、x,y座標は
P=XP , Y´P=YP ・・(2)
が成り立ちます。さらにP´が半径 (u2+E2)1/2の球面上にあることから、そのz座標は
P = [ (u2+E2) - (X´P)2 -(Y´P) 2 ]1/2
(1)と(2)を使うと
P=(u2+E2)1/2 cosθ ・・(3)
(2)と(3)から、θがP'の余緯度ということが言えます。
  【エリプソイド座標-2】 
θ=一定のときθ=余緯度になるという説明と、x−z平面で回転双曲面になる図の関係がわからなかった(赤玉)
 混乱しているようにみえます。
エリプソイド座標のθを一定値に固定し、他のu,λは任意という条件を満たす点の集合が、回転双曲面になるということです。
また、焦点付近を除くと、 このθは球座標系の余緯度にほぼ等しい(遠方になるほど漸近する)といったのです。
   【エリプソイド座標-3】
引力ポテンシャルの問題以外でもつかわれることはありますか?(加藤) 
 他の問題での適用例は、私は知りません。
 【メトリックス】
divを考えるとき、単位体積で割り算するとき、huhθhλを一定としているのは、微小量X微小量だからという理解で良いでしょうか?(西山)
はい、そうです。 
 【ルジャンドル陪関数】
引数が複素数のときは、どのように扱うのですか?(久住)
「特殊関数」(犬井鉄郎)とか、Handbook of Mathematical Functions (Abramowitz and Stegun )に書かれています。前者は理論的、後者は実用的。
複素数については、Hobsonの定義
Qnm(z)= (z2-1)m/2 (dmQn0/dzm )
 【正規重力-1】
q(u)という関数の定義(2.4.17)式に1/2がかかっていますが、
q(u)/q(b)という形では相殺されてしまうので、不要ではないでしょうか?なにかの規格化でしょうか?(加藤)
細かい点ですが、良く気づきましたね。
実は、2次の第2種ルジャンドル関数Q2(z)の定義にもとづくのです。
q(u) = Q2(iu/E)ですが、
複素数zに対して
Q2(z)= [ (3z2-1)coth-1 z - 3 z ]/2
と定義されているので、割り算の2が名残として現れるのです。

coth-1 z は cotangent hyperbolicの逆関数です。
 【正規重力-2】
式2.4.18で,遠方でO(1/r3)の項が出てくることは観測的、経験事実に対して問題はないでしょうか?(冨田)、
 問題はありません。
【正規重力-3】厳密解はわかったが、これが実際の地球の形(凸凹)を知るとき、どう使えるのか?この正規重力からのずれであろうか?(坂倉) 地球の形というよりも、地表面での重力が緯度とともにどう変わるかの大局的性質を示すものです。坂倉君のいうとおり、そこからのズレ(重力異常といいます)が、地下構造の情報を与えてくれます。
 【正規重力-4】変f(u)が解になっていることは微分して確かめられるが、この解の形を知らずに微分方程式から解を導出できるだろうか?(芋生)

 なるほど、もっともな疑問ですね。
ただ、fの満たす微分方程式の形がLegendreの微分方程式に似ていることに注目。こんな時は、未定係数kを用いて、まず f(u)=Pn(ku)と仮定してみるのが常道でしょう。これを微分方程式に代入したとき、ある特定のkの値のときだけ、微分方程式が満たされることがわかります(kの条件が出てくる)。
 【正規重力-5】
Qn(iu/E)において、iu/Eに何か物理的な意味があるでしょうか?(横尾)
あるかもしれませんが、わかりません。
【正規重力-6】
 2.4.17式 tan-1(E/u)がでてくる理由がわからなかった(水越)

 整数の次数のルジャンドル陪関数は、初等関数で表現できます。第2種のルジャンドル陪関数(n=0,2)の表現は、岩波公式集などに出ています
 【正規重力-7】
E→0で球座標に帰着できることから、式2.4.13の小文字のcnm, snmは、ストークス係数に一致するでしょうか?(湯本)
おもしろい発想ですね。残念ですが一致しません。次回の講義で、正規ポテンシャルを球座標で表現するとどうなるかがしめされます。偶数次のストークス係数が無限に表れます。 
【正規重力-8】
 地球は厳密に回転楕円体とみなすことはできるのですか?(増田)


正規重力の「正規」とは、何が正規なのでしょうか?(湯本)
現実世界には完璧なものはない(はず)なので、地球も回転楕円体からずれていると考えるべきでしょう。では、回転楕円体は無駄なものなのでしょうか?そうではないですね。そこからのズレで形状の凸凹を表す方が、原点からの動径距離で表すより、はるかにわかりやすいでしょう。

「正規」という語感ですが、「本来、そうあるべき(あってほしい)もの。だけど、現実にはない。理想化したもの」という感じですかね。「正規」重力からのズレが、重力「異常」ということになります。 

 その他のQや感想  A
・エリプソイド座標のラプラス方程式が複雑だったのに、結果の正規重力の式が簡潔な形で書けるのは美しいと思った(池端)
・ 科学者の知恵と根性を感じた(中山)

・厳密解ということに感心 荒尾
・等ポテンシャル面を回転楕円体と指定するだけで厳密に式が決められることはすごい(彦坂)

驚きを感じてくれれば、良く理解できているということですね。第2種が活躍する、レアケースです。
「美しい」という感覚を共有できたことを喜びます。
延々と小難しい式をいじくって、最後にポンと簡潔な結果になると、美しいですね。E=mc2に似ている。

ラプラシアンを出すときに、これまではデカルト座標から変数変換でひたすら計算していましたが、メトリックを使うと計算が楽でよいですね(水越、横田)
「感覚的にわかったようで、うれしいですね。