第7回 1月15日講義分。 
内容: Sect 2.7-2.8(重力異常、Talwani)、Sect3 重力の時間変化 まで)
          QA作成所要時間(2時間)(備忘)

内容に関するQ

A

【Talwaniの方法】
・ (θi、φi)だけでは頂点が一意に定まらないと思うのですが、実際はどのように処理されているでしょうか?(湯本) 
指摘のとおり、(θi、φi)だけでは頂点が一意に定まりません。
まず、頂点の(x,z)座標を定めます(形を決める)。するとi→i+1へ向かう辺が定まります。これらから(θi、φi)が定まります。それをつかって、Talwaniの方法で計算します。
【重力探査】
・他の探査(地震など)と比べて得られる構造に特徴がありますか?(精度の良しあしなど)(湯本)
・地震探査に比べて、浅い部分の構造が決まりやすい(精度が高い)という特徴があります。これは浅い部分は地震波線の通り道が疎になりがちだからです。地学雑誌に解説がありますhttps://www.jstage.jst.go.jp/browse/jgeography/104/7/_contents/-char/ja
【海上重力】
・配布資料の重力異常観測点ですが大阪湾など海上に観測点が少ないですが、陸上より測定が難しいのでしょうか?(彦坂)
海上の重力異常の等値線はどうやってきめているのでしょうか?(加藤)
船上重力計というものがあります。精度が陸上のものにくらべて100倍以上悪く、精度は1-10 mgal程度です。
【ブーゲー補正】
ブーゲー補正の地形補正はどのくらいのスケールの凹凸まで考えるのですか?(横尾)
良い質問ですね。観測点の近傍は水平方向に10mメッシュ、標高は1mより良い精度でのデータがほしいですね。遠方は、逆2乗則があるので、メッシュの切り方も荒くてよく、100m〜1000m刻み、標高も10m程度でわかっていればよいと思います。
 【重力と地下構造】
 断層以外にどのような地下構造が重力異常で発見できますか?(西貝)
・隕石孔、海では海山。スケールの小さいところでは、採石場の採石跡(無秩序採掘)。
原油層(背斜構造)など。
 【噴火予知】
重力測定は噴火予知などに用いることができますか?(湯本)
マグマがたまっていく過程で、重力の値がかわって噴火がちかいということがわかりますか?(冨田)
 実際に用いられています。下記論文の4−3節「2004年浅間山の火山活動」を読んでみてください。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kazan/50/Special/50_KJ00004285675/_pdf/-char/ja
大久保修平, 重力変化から火山活動を探る−観測・理論・解析, 火山, 50, 50周年特別号, S49-S58, 2005.
【断層の重力】 
・ 神戸〜大阪の重力の崖のようなものが淡路島にもみられますが、これも神戸〜大阪と同様の原因ですか?(横谷、山名)
はい、そうです。1995年の阪神淡路大震災をおこした兵庫県南部地震の断層は、淡路島では地表に出ています(断層記念館)
【大気の及ぼす引力】
・Free airと air-freeのところで思ったが、大気がなくなると重力はそれほど影響をうけるのだろうか?(坂倉)
良い視点です。一気圧の大気と同等の質量は、海水10mです(10m潜ると水圧が1気圧増える)。10mの水の層がつくる引力は 1 mgal 程度です。ある観測点で毎日、重力を観測していると、気圧によって重力が変わることがわかります( 0.3 microgal/ hPa)
 【ダイクの貫入】
ダイクの貫入というのが良くわからなかった(池端)
貫入については、
https://www.youtube.com/watch?v=BPB_dHl6dDo
岩盤に張力がはたらいていると、物質が垂直のシート状に貫入する。これがダイク。岩盤内部に裂け目を作ってやって、両側に押し広げるイメージ。
 【重力時間変化】
地形は刻々と変化しているとのことですが、重力観測はその都度、やりなおすのですか?(中山)
 原理的には、そうです。逆にいえば、重力観測を行った時点1,2、・・・とすると、その時点での観測点の高さがあると、解析が深まる
 【重力計の精度】
相対重力計の概観で公称精度と、実際の精度とにずれがあるということですが、どうしてわかるのですか?(増田)
同じメーカーの複数の重力計を用いて観測すると、互いの測定値に食い違いがでます。また、絶対重力計で定めた2地点間の重力差を、相対重力計で計ったときに食い違いがでます。これらから実際の精度がわかります。
【断層運動による重力変化】
スライドのP13 例1の横ずれ断層。右の2つの図で、象限の符号が上の図と下の図とで逆なのはなぜ?(岡)
よく、気づいた(えらいぞ)! スライド8をまず見直そう。地面に固定した観測点の重力変化は、式の右辺をみると、第1項:観測点の高さ変化(Dh)の効果と、第2項;地下の密度変化の効果でできている。。
 P13の下の図は、第2項の効果を表している。この場合の断層運動で圧縮されるのは、2象限と3象限なので、そこの重力効果が正となっている。
 では、観測点の高さはどうへんかするか考えると、この場合、圧縮された象限(2,3)は隆起する。隆起すると宇宙(無重力)に近づくので、重力は減る。多くの場合、第1項が第2項より数倍大きい(同じオーダー)ので、第1項と第2項の和は、概略第1項目のパターンになる。これが上の図に対応
 【絶対重力計】
 落下距離をはかるのに光を用いるのは精度をたかくするためですか?(久住)
結論においてはイエス。単なる光(たとえば蛍光等の光)ではダメで、レーザーのようにきれいな正弦波が長い時間にわたって継続する(コヒーレントといいます)ことが必要。

 その他のQや感想  A
・三宅島の陥没イベントが興味深かった(三木、楠、西貝)
こういうイベントはめったにないけれど、自然の驚異を感じます