浅間山火山活動を、重力変化で診る。その1(11月14日17:00更新)

9月8日以降の火山活動を重力変化から読み解く
東大地震研・浅間観測所(標高1406m)に設置した絶対重力計の連続観測データから、
マグマの上端(マグマ頭位)の上昇・下降を読み解く。

講釈(11月14日);11月は雨量が少なく(1日に5mm,12日に8mm@軽井沢),
擾乱は少ないようです.
さて,11月10日以降の重力減少が気になるところです.

講釈(11月2日);10月のデータがまとまりました.9月は雨量が少なかったのに対して,
10月は2回の超大型台風の来襲で地下水の発達による重力増加が顕著です.
理論的には地下水層が1mm増すと,重力値は0.04マイクロガル増加ですから,
台風22号では5.2マイクロガル増, 台風23号では6.0マイクロガル増が期待されます.
これは概ね観測値と一致しています.
さて,10月27日以降の重力減少が気になるところです.グラフ内のコメント文も
参照してください.

講釈(10月15日午後): 10月8日ごろには,重力の急激な増加があります.
この原因は,台風22号の豪雨により,地下水層が厚みをまし,その引力で重力が増えた可能性が高い.
しかし,増加全体ではなく,一部が火山性の重力増加である可能性もある.
(決定的なことが言えないのは,1台しか重力計がないためであり,
仕方のないこと).傾斜計のデータともつき合わせて,活動を注視する必要がある.

講釈(10月8日午後): 10月5日〜7日は,重力増加傾向です.
なお,10月6日午前の「講釈」では,無理に少ないデータで値を決めていたので
グラフからは除くこととしました.
また重力計の主要部品(コーナーキューブという落体を入れた真空筒)を交換したので
系統誤差が生じる恐れもあります.
10月1日までのデータと,10月5日以後のデータを折れ線でつないで解釈することは危険です.

講釈(10月6日午前) 下記の留保がありますが、重力はいったん上昇して減少というパターンです
(従来の噴火に至るパターン)
留意事項: 10月2日〜4日は、機材トラブルで十分な数のデータがとられておりません(平常時の10%程度)。
10月3日は欠測です。上記期間の誤差は、それ以外の日付のものより、5倍程度大きいと思われます。
ちなみに測定誤差は平常時は0.1マイクロガルですので,
トラブル時の誤差は0.5マイクロガル〜1マイクロガルと見込みます

講釈(10月1日) 9月29日の中規模噴火の際にも,重力が極大に達して、減少に転じている.
例数が1増え,いまのところ中期予測が当たっている.「重力が極大に達して、減少に転ずる」ときは注意

講釈(9月27日) 重力が極大に達して、減少に転ずると、噴火がおきていることに注意。1年前は重力変化量は+7マイクロガル」だったので、2004年9月1日も重力減少の時期に入っていた可能性が強い。
例数が2(9月1日を入れれば3)なので確定的ではないが、「重力が極大に達して、減少に転ずる」ときは注意

メカニズム(仕組み)は下図のとおり。時間変化グラフの@からDの段階は、下の説明図の@からDに対応させている。
量的には、1マイクロガルが約1500万トンの質量に相当。段階B〜Dで約3000万トンの柱状マグマが、火道内の1400m地点(観測点標高1)と山頂の間にに詰まっていると仮定すると、火道の半径は50m程度と見積もられる。
@’〜D’や@”〜D”の過程は、@〜Dの繰り返し(新しい柱状マグマの上昇)(