浅間山火山活動を、重力変化で診る(その2)

大学総合観測班・重力チーム
東大地震研; 大久保修平・孫文科・松本滋夫・小山悦郎
東北大・院・理; 植木貞人
北大・院・理; 大島弘光・前川徳光

2004年9月1日の最初の噴火にいたる,物理モデルの作成
 概要: 最初の噴火までに地下では,長さ数km,幅2km,厚さ0.7mのダイク(板状の岩脈)が,山頂付近に貫入した思われる.ダイクの上端は海抜0m付近,90度に直立ではなくて,80度ぐらいの傾き.ダイクの走向(長さ方向)は真北から東に60度と分かった. (下図右の赤くて細長い長方形)

観測データ
浅間山周辺に展開した重力観測点約20箇所について、2003年9月(静穏時)と2004年9月9-11日(噴火後)の値を比較。得られた,1年間の時間変化がすべて,最初の噴火に至る準備過程を反映していると仮定して,解析を進める.まず,地震研究所浅間火山観測所に設置した,絶対重力計FG5で基準点の重力値(g0)を決定.次に浅間山周辺の各地と基準点(観測所)の重力差(Dg)を,小型のポータブル重力計(ラコステ重力計)を用いて決定.この2段階を経て,各地の重力値をg0+Dgにより,決定.測定精度は,基準点は1マイクロガル(1マイクロガル=1G の10億分の1),周辺の各地では約5マイクロガルと見積もる.下図左に見るように,重力増加(ピンク)の帯状領域と重力減少の地域とが,明瞭に分離した,きれいな分布パターンが得られた.

解析
均質半無限媒質のディスロケーション理論を用いて,モデル計算と実測値とが,誤差の範囲で一致するようにモデルを決めた.理論はOkubo (1992)による.概要に述べたモデルによって計算された,重力変動の予測値を下図右に示す.
実測値(下図左)との一致は良い.