"地上のSUPERNOVA"

三宅島火山の山頂陥没で吸い込まれていくマグマ(Drain-back)によって,重力変化の"波動"が四方に広がっていく.ちょうど,星の一生の最後の段階で,周囲にガスをまき散らし,中心部は爆縮で縮んでいく超新星(SUPERNOVA)の出現をみるようだ... 


図1の解説

  1. 山頂部の重力減少(-140程度)は,ひきつづく陥没孔形成のための空隙形成(深さ1.5km,6千万立米),
  2. 南西部の重力増加(+111)はダイクの貫入(開口量1.7meter),
  3. 一周道路沿い(特に南東部)の重力増加(+60程度)は深部マグマ溜まりの減圧による全島的な沈降,

 で説明可能.

7月8日に最初は5千万立米だった山頂陥没はどんどんと進行し,7月11日には1億5千万立米になっていた.

  1. 山頂部の減少(−1135マイクロガル!)は、この巨大な陥没進行に伴う(足元の)質量欠損で生じた.
  2. 山頂から約2kmの環状林道の約50ないし130マイクロガルの重力増加.これらの地点では陥没孔は目線より上にある.引っ張り上げる引力が無くなってしまったことと,および足元の深部に逆流して来たマグマの及ぼす引力増加の2つの効果が相乗して重力増加をもたらす.

同心円状の重力変化は、火道が垂直な円筒のようなものであることを想起させる.この状態で陥没とマグマの逆流が進むと、島の中央部の重力は減少し、周辺部は増加することが予想される。これらの変動は,写真測量などによる陥没量1.5億立米で説明できる.

 陥没孔がさらに深くなって(500m)、3億立米ほどになった.

  1. (b)のときに+129マイクロガルの増加だった点では、−118マイクロガルの減少。これは陥没が進行して,陥没孔の重心が観測点の目線よりも下に下がったためである.
  2. 海岸一周道路では,陥没重心は目線より上にあるので,重力はさらに増加する。

重力変化は同心円状に広がっている。

 (予想)山頂付近の値は、陥没の拡大がさらに進行していれば減少。あまり大きな変化は無いかも。環状林道は減少して、一周道路沿いにかけては、もう少し増加するのでは? +10から+20マイクロくらいか?

 

(重力測定グループ:大久保修平、古屋正人、田中愛幸、渡辺秀文、及川純、前川徳光;文責 大久保,古屋)