東京大学 地震研究所

加藤愛太郎 研究室
Aitaro Kato Laboratory

研究概要Outline

地震はどのようにして始まるのでしょうか?,地震が起きる仕組みとは?,という素朴な疑問を常に抱きながら地震の研究を続けています。

地震学では大きなパラダイム・シフトが起きています。地震とは,震源域に蓄積されたひずみエネルギーを断層のずれ(すべり)により解放する現象です。通常の地震では,断層が高速にずれ(1秒間に約1mの滑り)地震波を放射することで地表が揺れます。地震のマグニチュード(M)が大きいほど,地震波の揺れの強さは大きくなります。近年,スロースリップと呼ばれる,ゆっくりと断層がずれ動くことでエネルギーを解放する特異な現象が,日本国内だけでなく世界中で見つかりました。スロースリップや低周波微動など,断層がゆっくりとずれる現象の総称を「スロー地震」と呼でいます。なぜ通常の地震に比べて断層面がゆっくりずれるのか,そのメカニズムははっきりと分かっていません。

プレート境界の断層では,「スロー地震」と通常の地震の両方が起きていて,お互いに影響を及ぼしあうことで複雑な滑り現象が起きていると考えられています。私は,国内外で発生した大きな地震の前に観測された地震活動(前震活動)の解析・研究を進めています。例えば,2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)や2014年チリ北部地震(M8.2)の発生前には,地震活動の移動を検出し,本震の震源近傍でスロースリップがプレート境界面上で起きていたことを示す結果を得ました。その他の大きな地震の震源近傍でも,地震の発生前にスロースリップが起きていたことを示唆する事例をいくつか発見しています。これらの前震活動には,活発なものから極めて低調なものまで幅広い多様性が見られ,複雑な様相を呈します。どのようにしてこのような多様性が生じるのか,スロースリップが地震発生にどのように関与しているのか,といった着眼点で研究に取り組んでいます。

トピックスTopics一覧を見る

2021年01月
断層構造の複雑性(0.1満点観測)に関する論文が出版されました LINK
2020年11月
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2020年09月
深部低周波地震に関する論文が出版されました LINK
2020年06月
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