Takashi Furumura Lab.'s Website 古村孝志研究室


Movie Archive

● 2007年新潟県中越地震によるPL波の生成と伝播

震源が浅い(<10-20km)大地震の際に、P波とS波の間に周期3〜10秒の長周期の地震動成分が強く現れることがある。これは、震源から放射された長周期のP波成分が地殻内を広角反射により伝わる過程で干渉を起こして生まれるPL波である。PL波はRayleigh波のリーキングモードと解釈でき、一般に距離減衰は大きいが、低速度の表層により強められ、数百キロにわたって良く伝播する。PL波はrayleigh波よりずっと高速(P波速度で)伝播するため、後続する表面波による長周期地震動の予測や、震源メカニズムの即時推定に活用できる。 動画は、2007年新潟県中越沖地震(M6.8)におけるPL波の生成・伝播過程を3次元差分法により評価、可視化したものである。PL波は、P波(赤)とS波(緑)の間に地表に沿って(地殻内を)伝わる波群として確認できる。

● W-phaseの生成と伝播

W-phase(Kanamori, 1993)は、大地震において遠地(1000-10,000 km)の地震計記録のP波〜S波の間に観測される、超長周期(100-1,000秒)の波群である。P波の直後の早い時間に到達するため、震源メカニズム推定(モーメントテンソルインバージョン)と津波警報に広く用いられいる。 W-phaseは、低速度の上部マントルをP波が広角反射により伝播する過程で、S波との干渉を起こして生成する。そのメカニズムは、低速度の地殻で生成するPL波と良く似ている。

● 2016年4月16日熊本地震(M7.3)の揺れの広がり

防災科学技術研究所の強震観測網(K-NET, KiK-net)の強震観測データを用いて、熊本地震の揺れが震源から広がる様子を可視化表示。図は地面の揺れの強さを強調して表示している。赤は震央をあらわす。震源から断層運動が進行した北西方向に強い揺れが放出されるとともに、大分で誘発地震が起きたことで、局所的に強い揺れが起きている。揺れは、およそ秒速3キロメートルの速度で西日本に広がった。大阪、名古屋、関東などの平野では、周期の長い揺れ成分(長周期地震動)が増幅され、その揺れが長く続いた。

● 2011年東北地方太平洋沖地震の津波シミュレーション

東北地方太平洋沖地震(M9.0)では、岩手県沖から茨城県沖にかけての約500km*200kmの震源域が平均20mずれ動いたことに加え、 日本海溝軸付近の、プレートが沈み込み始めた場所が50m以上も大きくずれ動いたことで、震源域の直上には大きな海底地殻変動が 発生、これが海水を押し上げ・下げして広い範囲に海面変動が生まれた。海面に生まれた巨大な水の山は、重力によって崩れ、 沿岸に津波が押し寄せた。
地震により震源域直上に海面変動が発生し、これが津波として沿岸に伝わる過程を シミュレーションにより再現した。


● 1995年兵庫県南部地震の強震動シミュレーション

1995年兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)は、明石海峡の地下を震源として発生したM7.3の活断層地震であり、 断層破壊が淡路島と神戸市街地の側に向かって進行しました。断層破壊の進行方向に向かって強い揺れが生まれた ほか、盆地構造における地震波の増幅と干渉により、神戸市街地と淡路市の狭い範囲に帯状に強い揺れが生まれ 多くの被害が生じた(川瀬・松島,2000)。
神戸ー阪神地域の3次元基盤構造と、兵庫県南部地震の震源モデル(Yoshida and Koketu, 1995)を用いて 強い揺れ生成の再現計算を海洋研究開発機構のスパコン「地球シミュレータ」を用いて行った。



● 1707年宝永地震の揺れ・津波シミュレーション

南海トラフ沿いでは、フィリピン海プレートの沈み込みに伴って、100〜150年の周期でM8〜9クラスの巨大地震が繰り返し 発生している。1707年宝永地震は、南海トラフ地震の中でも規模の大きなものであり、駿河湾〜日向灘にかけて一度にプレート のずれ動きが起きた、M8.7規模の地震であったと考えられている。
巨大地震が起きると、小刻みに揺れる強い揺れに加え、周期の長い長周期地震動も強く発生する心配がある。宝永地震の 震源モデルを用いて、長周期地震動の再現計算を「地球シミュレータ」を用いて行った。震源域に沿って、陸地では強い 揺れが起きるほか、震源域から離れた東京、名古屋、大阪などの平野で長周期地震動が強く増幅され、揺れが長く続く様子が わかる。



宝永地震の津波シミュレーションを見ると、南海トラフ地震の震源域は陸に近いため、場所によっては地震発生から 数分で津波が沿岸に押し寄せることがわかる。浅海に近づくと津波は増幅され波高が高まるほか、湾や入り組んだ海 岸線に津波が集まることで、局所的に波高が何倍にも高くなることがわかる。瀬戸内海、大阪湾、伊勢湾、東京湾など は水深が浅く、津波の伝播速度が遅れるため、地震発生から1時間以上をかけて湾奥に津波が入り込む。



● 深発地震の波動伝播と異常震域のシミュレーション

沈み込むプレート(スラブ)はプレート内部の不均質構造により高周波数(f>1 Hz)の地震波を内部に閉じ込め、 遠くまで伝える働きがある。プレート内の不均質構造をモデル化し、ウラジオストックの地下600km で発生した 深発地震の揺れの伝播シミュレーションを実施した。
震源から放射されたS波は、スラブ内の不均質構造により強い散乱を起こして長い波群を作るとともに、不均質構造 の内部に閉じ込められるようにしてスラブに沿って誘導されるように遠くまでと弱まらずに伝わる。 スラブ深部では冷えたプレートによる相転移の遅れにより、くさび形の低速度異常(MOW)が存在し、これが 地震波をスラブ上部に集めるレンズの働きを持つ。
スラブの周囲のマントルでは地震波の減衰が大きく、スラブの外に抜け出した地震波は急激に弱まる。 計算は、理化学研究所計算科学研究機構のスパコン「京」コンピュータ、および海洋研究開発研究機構のスパコン「地球シミュレータ」 を用いて行った。





● 2015年小笠原諸島西方沖深発地震の地震波伝播シミュレーション

2015年5月30日に小笠原諸島西方沖で発生した深発地震は、規模(Mj8.1;Mw7.9)も深さ(680km)も地球で起きる地震 の中で最大級のものであり、日本列島全体が有感となった。この地震は、沈み込む太平洋プレートの 下面付近あるいはプレートの外で起きた特異なものであった。地震波伝播シミュレーションより、マントルを上昇するS波 が地表で強いsP変換波を作るとともに、これが地殻内を広角反射(sPmP)波として伝播する過程で、S波と干渉を起こして 長周期(3〜10秒)のs-PL波を生成する過程が再現された。一方、通常のプレートの中地震に比べて、プレート内を伝わる 高周波数(>1 Hz)の地震波成分は小さかったことも計算から確認できた。s


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  • ● 2011年東北地方太平洋沖地震の地震津波同時シミュレーション

    プレート境界で大規模な地震が発生すると、地震の強い揺れとともに、地殻変動が発生して海底が隆起・沈降します。 これが海面を押し上げ・下げして津波が発生します。一般に、地震の揺れ、地殻変動、津波は時間・空間スケールが異なる 現象であることから、異なる方程式と計算手法を用いて個別に計算します。
    しかし、計算機の高速化により、運動方程式の3次元計算により、これらを同時に計算することが可能になりました。 図は、2011年東北地方太平洋沖地震の地震・地殻変動・津波の同時シミュレーションの結果です。地震断層運動により 海底が隆起し、そして陸地寄りでは沈降して海岸線が下がり、そこに津波が伝播・浸水する様子が確認できます。
    こうした新しいシミュレーションは、海底地震計・津波計等の観測データとの比較から断層運動の動的特性を理解して、 地震に伴う一連の現象を評価する目的に活用しています。


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