学生さんへ

もし、修士、博士課程での研究先を考えていたら、

 気軽に私たちの研究室を訪問して下さい。こちらでは、研究テーマは沢山用意していますし、皆さんの興味にあわせられるかもしれません。会って話してみて、自分に合うか考えるのが一番でしょう。

ただし、一つだけ。

 僕は、地球内部現象をマクロな複雑現象としてフラクタルやカオス的にとらえる最近流行りのやり方ではなく、クラシックなやり方、つまり現象を原子レベルすらまでのミクロな素過程に分離し、それらの積分値として地球内部現象をとらえる研究手法を用いています。これは、個人の価値観の問題で、この価値観を共有できる人に訪ねてきて欲しいです。
 アメリカでは、学生は、春から夏にかけて興味のある大学・研究室めぐりをします。平気で10ヶ所は廻るでしょう。それは、将来を左右する大事(おおごと)ですから、当たり前とも言えます。教授の最大の仕事は、優秀な学生をリクルートすること、といっても過言ではありません。僕の前のボスは、訪問する学生の為に、飛行場までいつも迎えに行ってました。そこまでしても、学生は10人に1人しか来ないわけです。なので、こっちとしても、訪ねてきて、最終的に選ばれなくても、当たり前のように感じるので、気兼ねなく。学生さんには、大学名や指導者の肩書きにとらわれず、自ら多くの研究室を訪ね、その目で確かめ、将来の指導者を決めることをお勧めします。

研究手法は多岐に渡ります。

 構造地質学、地球化学、鉱物学、岩石学、鉱物・岩石物理学、地震学、材料科学など従来の学問フィールドにとらわれていません。地球は多分いや間違いなく、このような学問フィールドの存在を知らないでしょう。
 同様な理由で、必要な勉強も多岐に渡ります。また、必要な基礎学問を身につけることも避けては通れません。いま、僕自身も、学生時代大嫌いだったケミストリーの勉強をさぼった分、粛々と再勉強しております。ただ、面白いもので、これがわかると何か新しいものが生まれる予感がすると、嫌いだった学問が、急に身近になってくるのです。そのキッカケを皆さんに提供することは、僕らの義務です。

地震研内では、様々な研究室と、研究手法を通して交流することになると思います。

 研究手法が、地震研内で限界がある場合、他大・研究所にお世話になることもあると思います。マントルレオロジーでは大御所のアメリカ・ミネソタ大のKohlstedt Labとは、学生交換などを通して共同研究をすることになっており、海外での武者修行のチャンスもあります。また、材料科学の知識・技術を積極的に導入するために、物質・材料研究機構(NIMS)との共同研究の提携を結んでいます。

これまでのバックグラウンドは問いません。

 むしろ、様々なバックグラウンド(目)を持った人の集まりになることを期待しています。例えば、材料科学からの学生も歓迎します。我々の研究手法、基礎学問の半分は、材料科学からのものです。地震研2号館4Fの403号室にソファーを用意して待っています。ソファーは主に僕のシエスタ用ですが。寝ていたら、最長10分ほど待ってください。間違いなく、それまでに起きます。


Takehiko HIRAGA, Division of Earth Mechanics/Earthquake Research Institute, University of Tokyo.