ERI Zengaku Zemi
単純な『亀裂』、複雑な『地震』
亀伸樹

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『亀裂』の成長は、地震発生の良いモデルとして地震研究で用いられています。地表での地面の揺れは、地下の断層上で亀裂が成長することでよく説明できます。寒天を岩盤にみたてた地震発生の模擬実験をみてみてみると、亀裂の成長につれ蓄えられた歪みエネルギーが解放され、亀裂は高速成長して地震波が放射されます。このような亀裂の成長は、単純な条件下では、破壊力学理論により定量的に説明することができます。

一方、観測研究から明らかにされた地震発生現象には、単純な亀裂の成長では説明困難なことが未だに沢山あります。例えば、地震の集団的な性質にあらわれる規則性として、余震発生が時間と共に減衰する大森公式(1984)や地震発生度数がマグニチュードとともに減るGR式などが有名ですが、その仕組みは未だにわかっていません。

 現実の地震発生を理解するために、単純な亀裂の研究で不足しているものは何でしょうか?地震研究で考慮すべき様々な要因がこれまで提案されていますが、決定打はまだありません。本セミナーでは、近年注目を集める・断層面の幾何形状・媒質の不均質性・断層における熱と流体の相互作用などの要因と、それらの果たす役割について紹介します。