ERI Zengaku Zemi
『ゆっくり地震』と巨大地震発生の予測可能性
小原 一成

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最近、通常の地震とは異なるタイプの「ゆっくり地震」の存在が次々と明らかになってきました。これは、1995年に発生した兵庫県南部地震のあと、国の地震調査研究体制の強化に伴って、日本列島に地震観測網やGPS観測網が稠密に展開されたためです。これらのゆっくり地震は、西南日本に沈み込むフィリピン海プレートと上盤プレートとの境界で、東海・東南海・南海地震といったプレート間巨大地震の発生域の深部側に隣接し、約半年間隔で発生します。巨大地震は、海のプレートが沈み込もうとするときにプレート境界が固着しているためひずみが蓄積し、それが限界に達したときにプレート境界がずれ動くことで発生しますが、ゆっくり地震の場合はプレート間の固着が弱く、小さなずれがより頻繁に起きます。このようなゆっくり地震は、西南日本だけでなく北米大陸西海岸など世界のの他の場所でも検出され、プレートの沈み込み過程や巨大地震発生メカニズム解明につながる可能性があるとして、世界的に注目されています。

本ゼミでは、ゆっくり地震発見のきっかけとなった現在の観測体制、発見の経緯、その特徴、ゆっくり地震研究における世界の動向、さらに、地震発生予測への期待について紹介します。