青い地球の地震学

いわゆる地震学は,地球の固体部分に焦点をあて, 固体の振動(地震波)を解析することで, 地震破壊の様子や地球の内部構造を明らかにする研究分野です. しかし大気や海洋の運動が地球を常に揺らしているという 「地球常時自由振動」が日本の研究者によって発見されるにつけ, 流体地球(海洋・大気・電離層)を含む全地球("青い地球")を 地震学の研究対象にすべく新たな試みが始まっています.

青い地球の地震学では,例えばこんなことも出来ます.

海洋波浪ノイズから決めた日本列島の構造(西田・川勝)

“元祖・青い地球”である海の波は,大地に揺れとして伝わり 地震観測にとっての最大のノイズ源となります. 青い地球の地震学ではそれを逆手にとり,時空にランダムに存在する震源として使い, 地球内部の構造・状態変化のモニタリングを試みます. 図は海洋波浪ノイズを使って決めた日本列島の浅部の構造です. 日高山脈の衝突帯が超低速度領域として見えたり,火山周辺の低速度など 様々な地質構造が見て取れます.地球に海がある限り波浪ノイズを 使った日本列島のマッピングは常時可能です. これは日本列島地下の状態のモニタリングが出来る可能性を示します. なんかワクワクしてきませんか?



地球の常時自由振動(西田)

地球全体が揺れる現象を地球の自由震動と呼びます. 2004年のスマトラ地震のような巨大地震でしか励起されないと 考えられていた地球の自由震動が, 地震が起きていない時にもいつも観測されることが 日本の研究者によって発見されました. 励起源は,大気か海洋のいずれかと考えられていますが, 決着はまだついていません. 地球の常時自由振動の発見こそが,“元祖・青い地球の地震学”です.



大気の地震学(綿田・西田)

図は"大気の地震学"を確立するために設置された微気圧計アレイ観測の例です. 気象学では全く行われていない観測です. 大地震によって励起された地震波とそっくりの振動が大気中でも 微気圧振動として観測されています. これも固体地球と流体地球が共振している現象の一例です. このほか海洋波浪起源のランダムな地動ノイズを使った構造解析など, 固液複合系地球の振動現象は魅力にあふれた新たな研究分野です.



実験場としての火山(川勝・綿田)

「青い地球の地震学」は,大気・海洋だけを対象にするわけではありません. 例えば火山でおきる様々な振動現象は,固体(火山)と流体(マグマ・ガス・水)の 相互作用によるもので,様々な不思議な振動現象が観測されます. 右図は2000年3月の有珠山噴火の10分前(!)の決死の地震観測で発見された 周期12秒の不思議な振動現象の例です. また火山の爆発による大気の振動が遠くの地震計・気圧計で 観測されることもしばしばあり,火山は,「青い地球の地震学」の 格好の実験場となっています.

世界中の地震計で観測されたピナツボ火山の噴火



惑星の地震学へ向けて



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