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教授  飯高 隆



研究の概要
この研究室では,地震を物理現象としてとらえ理解し,地震発生から地震に
伴う災害までの全体像を描き出す研究を行います。

◆ 首都直下地震を考える
 日本列島は,島国であり東から太平洋プレートが,南からフィリピン海プレートが沈み込んでいます。
このような環境下にあるため,日本列島では大小さまざまな地震が毎日のように発生しています。この
ような地震がもたらす災害を理解するためには,地震発生から災害までの全体像を理解することが特に
重要であると考えています。例えば,首都直下地震の全体像を把握するためには,どのような地震が発
生するかの震源の情報,発生した波がどのようにマントルや地殻を伝播するかの波動伝播の情報,到達
した波によって地盤がどのように応答するかの地盤情報,地震波が到来した際に建物がどう反応するか
の情報,建物の倒壊や被災による損失の情報など,様々な要因があり,災害の全体像を明らかにするた
めには,それらの個々の要因について理解し,全体を通して把握することが必要であると考えています。
そのため,私の研究室では,地震発生の場,地震波が伝播する構造,波動の伝播,地盤の構造,地震の
揺れについて研究し,それらの情報をもとに関係する研究室と連携し地震災害の全体像をとらえていき
たいと考えています。


図 南関東地域で発生する地震のタイプ

◆ プレート境界地震と災害の解明
日本列島に沈み込む海洋プレートは,陸側のプレートと擦れることにより巨大な地震や津波を引き起こ
します。我々が経験した東北地方太平洋沖地震はその一つの例です。また,将来発生が懸念される南海
トラフでの巨大地震もプレート境界地震です。このように,プレート境界地震は,巨大な地震を発生さ
せ,大きな災害につながります。そのため,プレート境界地震のメカニズムを明らかにし,その地震が
発生した時にどのような災害につながるかの地震災害の全体像を理解していきたいと考えています。プ
レート境界がどのような場所に位置し,どのような構造をし,その境界の物理的性質はどのようなもの
なのかの描像を明らかにし,そのような地震が発生することによってどのような災害につながっていく
のかを明らかにしていくことが,地震災害に対処するひとつの対策と考えます。この研究室ではプレー
ト境界地震の全体像をとらえ,災害軽減に役立てていきたいと考えています。


図 濃尾地震発生域のフィリピン海プレートや地殻の構造

◆ 内陸地震とその災害について
日本列島内には無数の活断層が存在しています。それらの活断層は人間の生活基盤のすぐ下に存在し,
ひとたび地震が発生すると甚大な被害をもたらします。これまでの研究から,地震発生が地殻内流体の
存在と大きく関係している可能性があることがわかってきました。例えば,近年では,福島県のいわき
地方における東北地方太平洋沖地震以降の地震活動の活発化や福島県浜通り地震の発生が,地殻内流体
の存在と関係する可能性があることや,それら地殻内流体の供給源として沈み込むプレートが考えられ
ることを示してきました。地震像を明らかにするためには,日本列島の沈み込み帯の全体像を知る必要
があり,それらの成果を災害の予測に結び付けていく必要があります。活断層によって引き起こされる
内陸地震の解明とその災害の軽減に関する研究も行っています。


図 いわき地域の地震発生域での反射面と地震の関係の概念図