主な研究内容
私たちが行っている研究は、電磁気的観測手法に基づいて、地球内部(主にマントル)を電気伝導度構造としてイメージングし、そのダイナミクスを議論しようというものです。プレートテクトニクスやマントルダイナミクスを深く理解する上では、地球表面の約7割を占める海域での観測が欠かせません。海域での電磁気観測には、海底電位磁力計と呼ばれる機器を利用します。地震研究所・海半球観測研究センターでは約20台のOBEMを運用しています。私たちは、国内・海外の大学・研究機関とも共同して、世界中の様々な海域、多様なテクトニクスを対象に機動的に観測を実施しており、世界のマントル電気伝導度構造研究を牽引しています。地球内部構造を調べる手段としての電磁気学的手法は、地震学的手法とは独立な情報を与えることができるので、近年その重要性が増している一方で、研究者人口は少なく、未踏のフィールド、魅力的なテーマがたくさんあります。
海底MT探査
地球内部で起こる電磁誘導現象を利用して、電気の流れやすさの分布(電気伝導度構造)を調べる観測手法です。これを海底で行うのが海底MT探査です。
海底電位磁力計(OBEM)
海底MT探査に用いる観測機器について紹介します。
海洋上部マントルの電気伝導度
上部マントルの電気伝導度構造を調べるとどんなことがわかるのでしょうか? 私の研究成果を中心に紹介します。
注目の成果
観測研究計画
HEB(ハワイ・天皇海山列屈曲域東方における電磁気・地震合同観測)
ハワイ・天皇海山列屈曲域の東側(ミッドウェイ島の北方)海域にて実施を予定している、海底電磁気・地震の合同観測計画です。ドイツの研究グループと共同で行っています。海山列の屈曲をもたらしたマントル深部と太平洋プレートの相対的な運動方向の変化を利用し、海洋アセノスフェアの粘性構造を制約することを目標としています。
Oldest(太平洋最古海盆)
マリアナ海溝沖太平洋の、最も年代の古い海底下のマントル構造を調べようとする計画です。韓国と共同で行っています。
西之島
2013-2017年に約40年ぶりに噴火して、流れ出たした溶岩で大きく面積を広げた西之島。その地下構造を調べようと、海底MT探査を開始しました。が、意外な発見も!
普通の海洋マントル
プレート境界やホットスポットなどのテクトニックな活動地域から離れた「ふつう」の海洋マントルの構造を調べることで、プレートテクトニクスやマントル遷移層の根幹問題を明らかにしようとするものです。
ISOLDE
南大西洋のトリスタン・ダ・クーニャホットスポット周辺の構造探査計画です。ドイツと共同で行いました。
TIARES
仏領ポリネシアのソサイアティホットスポット周辺の構造探査計画です。フランスと共同で行いました。
プチスポット
北西太平洋で発見された新種の火山「プチスポット」の調査研究です。
スタグナントスラブ
フィリピン海と小笠原沖太平洋に観測アレイを展開して、フィリピン海の下に沈み込む太平洋プレートと、背弧海盆マントルを地震学的・電磁気学的に描像しようとした観測研究計画です。
中部マリアナ横断
中部マリアナトラフを横断して探査した、日・米・豪3カ国共同の電磁気観測計画です。
MELT
太平洋中央海膨南緯17度付近の構造を調査しました。日・米・豪・仏の4カ国の合同探査です。