地球自由振動: 脈打つ地球


巨大な地震が起きると、地球を地震波が何周もする事が知られています。例えば、最近おこった四川地震の際も、表面波という地表に沿って伝わる地震波がぐるぐると地球を何周も伝わる様子が、実際に地震計に記録されていました。周期にして200秒という、とてもゆっくりとした振動が伝わって行く様子が記録されたのです。地震波が地球も表面を何周も伝わるにつれ、その大きさも小さくなり、形も崩れ、一日もすると見えなくなります。図1は防災科学技術研究所の広帯域地震観測網F-netによってとらえられた表面波です(横軸全体で約一日)。日本列島を表面波をが通過する様子をがはっきりと見て取れます。20万倍ほど早回しにして音声にしたのが右の図です。鐘をついたような音を聞き取れると思います。"ぐうぉん、うぉん、うぉん"というそれぞれの唸りが、地球を1周、2周、3周した地震波に対応します。

四川地震の例

図12008年四川地震の表面波波形を音声化(1万倍早回し)した情報も示している

2004年12月26日にスマトラ島沖で巨大な地震が起きました。マグニチュードはにして9を越える巨大な地震です。この地震では、表面波が地球を8周する様子をが地震計がによってとらえています。一日もすると、れば地震波は消え去った用ようにみえますが、実際には一ヶ月以上にわたって、地球は振動をつづけていたのです。この地震はあまりにも巨大で、実はもっと長い期間地球は振動し続けていたのです。

図2は日本の長野県にある松代(まつしろ)という観測点に設置されている地震計の記録です。ぱっとみは図1と変わらないように見えますが、横軸の長さを比べてみてください。今度は二ヶ月分の記録を書いています。中心付近でにスマトラ地震が起きて記録されています。上から2番目の図は(0.1-1mHzでバンドパス・スフィルター)は、一月一ヶ月を越えてもなお地球が振動しつづけていることを示していますが分かります。この記録された振動は、地球全体が脈打つように振動で地球自由振動と呼ばれています。

スマトラ地震の例

図2 左:スマトラ地震の地動記録。右:0S0(一様収縮膨張を繰り返すモード)の模式図。

どのように脈打っているか、実際にデータを見てみましょう。図2の下の図は、スマトラ沖地震がおこってから約一ヶ月後の、ドイツ、アメリカ合衆国、オーストラリア、日本の、スマトラ沖地震がおこってから約一ヶ月後の地震波記録を示しています(上下動)。普通、世界各地の観測点では、震源から近いところから、地震波が伝搬された順に記録されます。図3ではどうでしょう? 全ての観測点でほぼ同時に上下している事を示しています。これらの記録は、地球全体が一様に1112秒の周期で脈打つように膨張収縮を繰り返していることを示しています。図2の右の図は、地球全体の振動を表したアニメーションです。地球全体が膨張収縮を繰り返している様子が分かります。 振動の振幅は0.03mm程度です。振幅は一見小さいように見えますが、巨大な地震でないと地球全体を脈打たすことはできません。しかしそしてひとたび揺れ始めると長い間揺れ続ける性質があります。スマトラ沖地震の際には三ヶ月の間揺れ続けていた事が確認されいています。

2010年チリ地震の例

図3左 2010年チリ地震の地動記録(F-net(筑波)の上下動記録に1000秒のローパスフィルターをかけている)。音声化のため50万倍早回ししている。 右: 色々な振動パターン。上から膨張収縮モード(0S0)はフットボールモード(0S2)。洋梨モード(0S3)。 (図の作成は EarthScope)

地球全体が膨張収縮を繰り返す振動パターン(モードと呼ばれます)以外にも、フットーボールのように全体がひしゃげるモードも知られています。 ここでは一例として、2010年チリ地震の記録を見ていきます(図3左)。1000秒より長周期の周波数帯では、数日振動し続けている様子が分かります。 再生ボタンを押すと音声として聞くことができます。実際に聞いてみると、ピアノの鍵盤をいっせいに叩いたかのような音がすると思います。 ピアノの鍵盤それぞれが振動のパターン(モードとよばれています。図3右に例を示しました)に対応しています。 多くの鍵盤のたたき方の組み合わせによって、あらゆる振動のパターンを再現できる事が知られています。(ピアノの鍵盤は、鍵盤の数が少なすぎるので、 あらゆる音を再現する事はできないのですが、、、、)。楽器の奏でる音を聞いて楽器の形を想像するように、地球の自由振動を地震計で観測する事によって 地震学者は地球の内部に思いを馳せているのです。 

色々なモード (Lucien Saviot of the CNRSのweb site)


参考文献


謝辞:今回用いた地震波形記録は,防災科学技術研究所のF-net観測網のデータを利用させていただきました。またEarthscope で作成した動画を使用させていただきました。記して感謝します。