Ongoing Projects / 進行中のプレジェクト(常に更新中)


2021/3/7
■科研費(基盤B)によるチリ三重会合点調査 が採択されました.来年(2019年)の1月にピストンヒートフロー調査,そして(別予算による)OBS設置などを行います.JAMSTECの「みらい」による大型研究プロジェクトによるものです(PI:木下,岩森さん,Lindsayさん)
現在チリの研究者主筆で,熱流量の結果論文準備中(2021・3月).
■IODP Drilling Proposal and related paper in prep.
Nakata and others subitted a drilling proposal to IODP, "Drilling and monitoring in Hyuga-Nada: Unveiling effects of ridge subduction on slow earthquakes". As of 2021 March, SEP recommends 'revise' to the full proposal.
I am preparing a paper describing the result of heat flow in Hyuga-Nada.
■沖縄tトラフ熱水域の孔内熱水養殖装置での温度潮汐変動
JAMSTEC招聘研究員としての研究です.
■IODPによる室戸沖南海トラフ先端部掘削「T-Limits」(PI:JAMSTEC稲垣さん,MARUM-Heuerさん)は,2017年に無事終了,温度計を設置しました.その温度データ回収航海が,「かいこう」で行われ,木下が乗船して,CDEXの秋山さんと一緒にデータ回収に成功しました.
■ビトリナイト反射率から過去の温度を推定する方法の妥当性
*Utsav Mannu, David Fernández-Blanco, Ayumu Miyakawa, Taras Gerya, Masataka Kinoshita, Thermal maturity observations depend on the structural history of the wedge, 2021 JpGU.
(Miyakawa et al., 2019 PEPS)
付加体の研究などで,地層露頭から採取した堆積岩中のビトリナイト反射率を測定し,その場所の過去の最高温度を推定します(Burham and Sweeney, 1989が有名ですね).そして,現在の地温勾配が過去もずっと同じであったと仮定すると,最大埋没深度が推定できる,というからくりのようです(例えばOhmori et al., 1997 Geology).
「熱屋」としては,突っ込みどころが満載です.が,過去の再現の手段として,「温度の記憶」を使うというのは,big picture を描く研究者と,実験・観測・理論によるevidence-baseで研究を進める研究者が協力して進められる,という意味で画期的だと思います.
さて「突っ込みどころ」ですが,上記では,温度場が常に平衡状態にあることが暗黙のうちに仮定されています.つまり,あらゆる地質時代において,その時の温度場は平常状態であり,かつ,それが現在の温度場に等しい,としています.
これは自明ではありません.
なぜなら,付加体は常に成長発達しているからです.無論その下のプレート沈み込みの効果も,特に沈み込むプレートの状況(年代や沈み込む速度など)が変化する場合には重要です.そのような状況では,まず熱伝導・物質移動による温度場が非平衡になります.加えて,ビトリナイトの熟成特性(時間と温度の関数)にも,その刻々と変化する温度情報を反映させなくてはなりません.つまり付加体を構成する粒子一つ一つの軌跡とその温度を逐一計算することが,原理的には必要となるのです.
それをやってみよう,というわけですが,何分観測屋の悲しさで数値計算が得意ではありません.付加体は大変形するわけですが,それを粘性流体で近似して,温度場と連成して解こうとしても,発散してしまいます.
では,DEM(粒子法)でやればいいではないか,軌跡トラッキングはDEMのお手の物だし.というわけで産総研の宮川さんと相談しましたが,悲しいかな,DEMでは温度場が計算できません.
今度インドからMANNUさんという若い研究者が,地震研の招聘研究者として来日予定です.彼とは先日ウイーンのEGUで会いました(もとはMike Strasserのところにいました).付加体の大変形の数値計算をやっている人です.まさに渡りに船ではないですか.
一方,JAMSTECの堀さんのところにも,「アーツ」さんがいます.彼も数値計算やなので,ぜひ一緒にやりたいと思っています.
今や数値計算は圧倒的に進んでいるようです.ということは,観測屋のような素人でも,専門の研究者と一緒にやれば,面白い結果をえることができそうではないですか.ビトリナイトの反応速度など,素過程については,今大気海洋研の福地さん,JAMSTEC高知コア研究所の濱田さん,の教えを受けているところです.皆さんもぜひ!

2018/4/23
■木村さんの基盤S(木下は分担者です)による研究
(Kinoshita et al., under review in PEPS)
南海掘削(NanTroSEIZE)において,断層面の状態が,破壊状態に対して何割なのか,クーロン破壊モデルを使って評価しようというものです.その昔Morris (1996)が提案したSlip tendency(断層面のある点に働くせん断応力と有効垂直応力の比)を使う,というものです.これがその場所の摩擦係数に等しいと,破壊が起きる,ということになります.
木村学さんの「基盤S」は,今年が4年目です.いよいよ,今年の後半(11月~3月)に,「ちきゅう」によるライザー掘削を熊野沖南海トラフで実施し,何とか地震発生断層に到達を目指します.「下から覗く地震断層」,その姿を一刻も早く目の当たりにしたいものです.

■日本学術会議 大型研究計画「マスタープラン2020」に,地震研から応募しました.これから採択に向けて,ブレーンストーミングや研究集会を行います.


2016/12/27
 地球内部で起こっている諸現象を描像とダイナミクスを理解するためには、微視的スケールでの素過程(物理・化学的過程)から、10km以上の大規模な物質・エネルギー循環およびテクトニックな変動過程まで、10桁以上のダイナミックレンジにわたる観測・研究が求められている。
 最近の分析機器や実験装置の進歩により、素過程のほうはサブミクロンスケールでの岩石-流体相互作用の直接観測が可能になる一方、100mを超える広域情報も、構造探査技術の発達により10年前とは比較にならない明瞭な描像が得られるようになった。しかしながら、両者を接続するmmから100m程度の観測が遅れているために、統合的理解の障害になっていると言わざるをえない。
 例えば現位置情報という観点では掘削・検層は優位性があるが、コスト等の点から空間網羅性に制約を受ける。海底ケーブルによる海底観測網は、掘削孔観測所との併用により3次元的な描像に有用であろうが、これも設置・運用コストが大きい。また両者とも事前研究が不可欠であり、網羅的地形・地質・地球物理マッピングに加え、海底での探索的・機動的調査が前提とされる。
 今後,大学の利点を最大限に生かして、第一に既往データ(地形・地質構造など)の十分な検討による特異点やテーマを絞り込み、第二に地質学的なビジョンを持って探索的・機動的な海底観測を実施し、系統的調査の「さきがけ」をなしたい。
 熱・水理的観測・監視を軸足としつつ、大学人として「自由に動ける、動く」ことを常に意識した観測研究を行っていきたい。

 今後「海溝型巨大地震発生の場を知る」ための観測・研究を重点的に推進したい。破壊(地震発生)を規定する、せん断応力、上載荷重、有効摩擦係数(間隙水圧を含む)のうち、一番変動しやすいのが間隙水圧である。地震準備段階でテクトニック応力や海洋潮汐等の影響を受けた静的変動や、海洋潮汐に関連した変動、断層破壊時のダイナミックな挙動が注目されている。巨大地震断層の海底出口は、地下の水理状態をモニターする窓としての役割を持つ可能性が高い。掘削や海底ケーブルと合わせて、海底での熱・水理マッピング・モニタリングを強化して実施し、これまでに活用している有限要素法ソフトウエアによる数値計算と合わせてモデル化することで、地下の水や熱の動きを、これまでにない精度で把握する。