三宅島火山灰の水溶性付着成分から見た噴火の推移

(図は予知連記者レク資料から)

【解説】

 火山灰に付着している塩素・硫酸イオン濃度が9月に入って変わってきた。8月29日の噴火(「火砕流」噴火)以降、爆発発生場以深で地下水の影響が少なくなり、9月9日、10日の火山灰放出以降マグマから地表へのガス通路が確立された結果と考えられる。

 この解釈は、9月10日頃から、噴出火山灰中に含まれる粘土鉱物や石膏の量が減ってきたこと、および、噴煙中への二酸化硫黄の放出量が急増したことと調和的である。

*一般に、火山灰の水溶性付着成分中の塩素/硫黄比は、水蒸気爆発では0.1以下程度と低く硫酸イオン濃度が高い。マグマ水蒸気爆発になると同比は高くなる。マグマ噴火では同比が0.5以上さらに高くなると同時に低い硫酸イオン濃度を示すようになる。

ところで、マグマから逃げ出した二酸化硫黄が地下水(熱水)に選択的に吸収される。水蒸気爆発の場合には、地下水に由来する水蒸気は高硫酸イオン濃度を示すとともに低い塩素/硫黄比を持ち、火山灰に付着する。これに対して、マグマ噴火では、地下水の関与がほとんどなくマグマの二酸化硫黄がそのまま放出されるために、火山灰に付着する水溶性成分は高い塩素/硫黄比を持つようになるものと考えられる。

東京工業大学火山流体研究センターでは、今回の三宅島噴火の火山灰に付着している水溶性の硫酸と塩酸の濃度を継続的に分析している。地震研究所では分析に供する火山灰を現地で採取し提供し続けている。

(文責 中田節也)


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