2001年2月16日(金) 1.観測支援: 東京消防庁ヘリ 「ひばり」 JA9610号機     立川から飛来、東ヘリ発着。クル−3名(鈴木康之機長、左に着席)     東京消防庁4氏(杉村次長・飛行隊長・警防課2氏)の三宅島現地     地上視察があり、上空観察はその間30分を予定。 2.搭乗観測者 : 大島・川辺(地調)  3.天候・飛行コース・時刻等 :     南海上を低気圧が東に移動、雲が丁度三宅島にかかっているため、    出発30分延期。南関東は晴、天候急回復、富士山も見え視程良好。但し    風強く、海は白波。三宅は西風、約1500mに薄雲。山頂部は薄く残雪。    (さらに30分遅らせたらもっと良かったかもしれない。    カルデラ内殆ど見えず。)  搭乗時間 09時28分 〜 12時50分 (三宅中学に着陸、東消4氏現地視察。                   帰路神津島で給油、4氏現地本部?へ)  観測時間 10時27分 〜 10時58分 (離着陸含めて約30分間)    南方洋上の低気圧通過を待って 9:28 東京ヘリポート搭乗 9:30 南に向かって離陸、 海ほたるを経て東京湾の中央を南下するいつもの消防庁コース 〜 浦賀水道 〜  伊豆大島(カルデラ内積雪)東方 〜 「く」の字形にやや新島寄りにシフトしてか ら三宅島へ 10:22 神着到達、右旋回、西(風)に向かって降下。 10:25 三宅中学仮設ヘリポートに着陸、東消4氏現地視察へ。  10:27   同  離陸 山頂上空(高度1500mくらい)に雲、西風で噴煙が東へ低くたなびいているため、西 側へ。 〜 伊ケ谷 〜 阿古 〜 レストハウス 〜 鉢巻き道路沿い 〜 スオ ウ穴北で左旋回 以後、中腹のほぼ鉢巻き道路沿いに 北〜西〜南 を3往復。高度は3500ftが上限。 「もう少し火口寄りに」お願いしたが、後席の整備担当氏の答は「これが限度」。「 !!」 10:58 三宅中学に着陸。東消4氏帰着、搭乗。  11:00   同  離陸、 〜 伊ケ谷 〜 阿古 居住地を視察後、離脱。 11:21 神津島空港着陸。給油、空港待機へ。東消4氏は現地本部?往復。 11:58 新中央航空定期便着陸後、神津島空港離陸。  〜 神津島 〜 式根島 〜 新島 〜 鵜渡根島 〜 利島 のいずれも西岸沿 い。機長から東消諸氏へ各島災害対応の案内アナウンス。 〜 伊豆大島空港西側  〜 城ケ島東方 〜 久里浜 〜 海ほたる 〜 12:48 東京ヘリポート着陸、  12:50 降機。 ヘリは立川へ。 4 観察事項 強い西風のため、カルデラ内に白煙滞留、内部は殆ど見られず。西側計4往復の最終 回に、北側の滞留白煙がややとれ、かすかに主火口の輪郭が見えたのみ。(もう少し 遅い時刻なら中まで見えたかも。) 山頂部は薄く残雪。植生の乏しい部分は白く見えやすく、牧場〜二男山地域もまだら に白。 (1)噴煙は白色。西風により東にたなびくが、あまり上昇せず、カルデラ縁上約30 0m。最高せいぜい1100m。東斜面を這い降り、そのまま東海上へ。青白ガスも下位 にただよう。 モックモックと上がるパルス状純白煙も1月に較べて高さと力強さに欠け、活動低下 の感。(時間間隔ものびたよう。) 南西部で1回だけ、やや赤みを帯びた(わずかに灰を交えた?)煙がカルデラ縁程度 の高さまで上がったように見えた。噴気帯のウップン晴らしか(崩落・埋没物質をガ ス圧ではねのける意)。 (2A)南西斜面に残雪。その雪面が多少よごれているのに川辺氏が気づいた。新雪 の跡ではなく、雪は尾根の日蔭側に多く残っている。日向側は黒い地肌を見せている ところもある。(今朝は雪ではなく雨だったのか。)積雪の跡全体と較べると南西斜 面上部はたしかに薄茶色によごれている。12月以降時々見られる西寄り噴気帯からの わずかな降灰があった模様。 (2B)これとは別に、西〜北西側の縁〜斜面上部が薄くピンクがかって見える。こ こでも「降灰」があった模様だが、位置的に赤色酸化カルデラ壁面の外側に当り、噴 気帯とも離れており、壁面崩壊(崩落)による「土煙」がうまく風にのって外側に降 った可能性が高い。(風向きとの対比で日時をある程度特定できるかもしれない。) (3)南西縁の地割れに目だった変化はない。斜面側200m程度(あるいはもっと) の範囲に、縁とほぼ平行に近いセンスで走る線状構造が複数見られるが、接近して確 認するまでには至らず。低高度から見て水平に近い筋模様が(往復飛行で)高角で見 ると雪解けの流れによる筋とわかるものもあるが、尾根〜谷を切るように見える線状 構造(特に登山道最上カーブより東側)は気になる。(もっと近づいて!)  それとは別に、山腹のほぼ平行な縞模様はやはり見える。気になる。 (4)植生が失われた地域では、以前から溶岩流跡など地表地質があらわになってい るが、雪をかぶるとさらによく見える。登山道東から南岸にかけて発達したガリの頭 は4コ以上連なる古い割れ目火口列の上中位火口の内壁急斜面から発している。以前 から見えていたが、ますますあらわになった。(噴火活動に直結した話ではないが、 今後の雨期のことを考えると、土石流発生地点の意味を理解するために書いておいて もよい事かもしれない。) 5。昨日2月15日気象庁COSPEC観測班が撮ったカルデラ底写真 気象庁帰着後、昨日COSPEC観測班が撮ったカルデラ底写真を見せてもらった。 14日夜からの降雪でカルデラ底も雪化粧。主火口周辺の火砕丘斜面が冠雪、北西斜 面の亀裂部分と北東斜面下部(いずれも噴気地域)は黒い。 西側の黒く見えた池が冠雪していないのは当然(噴気口からの水〜湯が流れ込んでい るため)だが、主火口北のカルデラ底中央部(ここは湿地状に水浸し地域)も結構雪 をかぶって水面が少ないのは少し意外。(前回カルデラ底を見たのは1月24日なの で、あまり比較にならない?) 主火口北西の噴気列は元通り活発になっている(古い話だが、1月24日観察時、崩 落物が蓋をして、噴気の出にくい状態になっていた。) 写真で見る南西壁面は汚れなく白い。(2A)に記した南西斜面の降灰らしき汚れは この写真以後、1日以内にできたのだろうか? 6。南西縁の地割れは12月6日朝の地震で生じたらしい。 南西縁の地割れは、最初、12月13日の飛行後、写真現像して気づいたものだが、(飛 行中は気づかなかった)その後写真点検により、12月8日、さらに12月6日の写真に も写っていることが確認された。(このことは2月5日予知連でお話し、12月27日の 勉強会で12月12日の地震によるものらしいと説明したのを訂正した。) 潟山さんにこの頃(12月)の有感地震記録をお願いしたところ、次の地震で生じた可 能性が濃厚となった。  2000年12月6日 07時38分、北緯34度14.3分、東経139度09.1分、深さ12km、M3.8 (地震・火山月報(防災編)平成12年12月 P.31 「付表1-2 三宅島近海及び新島 ・神津島近海を震源とする震度1以上を観測した地震の表」による) なお、この地震は2000年12月のこの地域最大の地震でもある。 ヘリコプター観測の皆さん、12月6日より前の写真にもしもこの地割れが写ってい たら、知らせて下さい。  (大島 治)