2001(平成13)年5月4日(金) 1.観測支援: 東京消防庁ヘリ 「ちどり」 JA119A号機 (東消 No. 1)    立川より飛来。観測専用のため、途中着陸なく三宅島往復。    S. MAEKAWA機長 (左席) ・奈良隆志操縦士 (右席) ・小林整備士 (中列席)    クル−3名(名前は航空ヘルメットによる)と我々観測員2名のみ。    機内空間広く快適、左右に小窓がありありがたい(前回の「かもめ」も)。   2.搭乗観測者 : 左席= 気象庁管野智之氏(4月から火山課、初飛行)           右席= 大島 3.天候・飛行コース・時刻等 :  天候思わしくない。昨日は雨(三宅島も大雨の予報だった)。今朝も南関東は一面の 雲におおわれ、上りの東海道線から見る南の空は鉛色、東の空が少し明るい。大船駅 停車中の07:07 ケータイが鳴る。「決心」結果は実施。都内に入ると急に陽射しもも れてきた。 ヘリ搭乗後天気は徐々に回復、しかし下記のように三宅島は山頂の高さ一面に雲、火 口観察はできなかった。出発を30分〜1時間遅らすことができたら、状況は好転して いたかもしれない。少し残念。  搭乗時間 08時53分 〜 10時51分 (立川より飛来、降機後ヘリは立川へ)  観測時刻 09時36分 〜 10時04分 (28分間) 08:53 搭乗。東京ヘリポートは休日のため庁舎ガラン、          東京消防庁格納庫もガラン(1機もいない、みな立川へ)。 08:55 北向きに離陸。右旋回後、いつもの東消庁コースで東京湾を南下。     (〜 海ホタル 〜 富津洲 〜 久里浜 〜 伊豆大島東方 〜) 休日のため城ケ島南東まであちこちに釣り船が群を成している。海は穏やか、南下す るにつれ白波チラッ程度。視程よくない。伊豆大島見えず。高度 2000 ft で安定飛行。 09:35 三宅島接近。一面の雲。高度たしか約 3000 ft。 右前方雲の切れ間から神着(湯の浜漁港)あたりがチラッと見える。雲の上限は高さ 不揃い1200〜1500mくらい、その中にひときわ白くモクッと見えるのが噴煙。 09:36 三宅島東海上を南下、純白の噴煙を右に見る。噴煙は南側へ上昇している。 (あとで機長に聞いたところによると、北北東の風7m。)右前方雲の切れ間に大路 池が見える。 山頂部は完全に雲の中のため、カルデラ観察断念。雲の下の、斜面と一周都道沿いを 観察することに。昨日の雨による泥流が気になる。 09:38 南東海上を大きく左旋回、雲の中を通って急降下(だそうで、耳がへん だったら大きくあくびして下さい、と機長アナウンス。鈍い私は何も感じないが笑っ たためか)、左窓の暗い雲の下に東海岸(瓢箪山)が見え始める。 09:39〜 反時計回りに、都道沿い低空を北東〜北〜西〜南西へ。 阿古まで来て(もう少し先の南岸まで、と期待したが青白いガスが山頂側から漂って おり、機長判断で)左旋回。 09:45〜 時計回りに、再び都道・海岸沿いに、南西〜西〜北〜東〜南東、        大路池から先の南岸には青白ガスがかかっている。坪田漁港で右旋回。 09:55〜 東山腹を北へ上昇、泥流発生源となる谷の浸食・崩壊状況調査。        反時計回りに、高度 450mくらいで東〜北〜西〜南西へ。        1983年火口列手前(北)で左旋回。 10:02〜 村営牧場レストハウス方面を遠望、        西斜面上半部(カルデラ縁は雲に見え隠れ)の状況を見つつ、 10:04 伊豆より離脱。      〜 往路と逆(〜 洲崎 〜 富津洲 〜 海ホタル 〜)  10:50 東京ヘリポートに南側から着陸、  10:51 降機。「ちどり」は直ちに立川に帰投へ。       警視庁ヘリポートには大型ヘリ「おおぞら」がいる。 今日は随分短時間のフライト&早い帰還だった。東京湾南下の直線コースに多少追い 風だったこともあって往路40分、復路45分、速い。 気象庁管野智之氏同乗のため、いつもの気象庁への報告は不要となった。(必要なこ とは機内で伝達済み。)大手町近くまで氏の愛スポーツカーに乗せてもらった。快適 。      4。 観察事項 4−1. 噴煙 遠くからは一面の雲と紛らわしいが、近づいてみると一段と白く、純白の噴煙。灰を 交えず。入道雲のようにモック、モックとわき上がり、近頃にしては力強さがある。 明らかに昨日の雨の効果とみられる。 (わき上がっている位置=)火口の位置で高さ約1300m。北北東の風に流され、モク ッと上がったプルームの形のまま南側へ膨張拡大・移動しており、最高1600m程度か。 噴煙は、低空から見ると南南西にたなびいており、海岸線で新澪〜大路の範囲。下部 〜地表に青白いガスを伴っている。接近時、管野さんは臭ったそうだが、鼻の悪い私 はダメ。 4−2. カルデラ内・火口  雲の中で観察できず。 4−3. 周辺斜面 ○ 東斜面のガリの発達著しく、荒れ果てているが、特に著しい変化は見あたらない 。雨も浸透して谷に水の姿はない。 ○ 北東地獄谷付近の谷底・側壁には赤色スコリア(〜アグルチネート)が露出。以 前、下位の側壁に見え始めていたが上方まで拡がった。谷の深さ・幅ともに浸食が進 んでいる。 ○ 北斜面の谷は比較的浅く、ガレた岩場状で(転石が積み重なり)、北東斜面のよ うな垂直な谷壁はつくっていない。 ○ 植生は南東・北西斜面で鉢巻き道路上方までまだらに新緑が見えるが、特に東( 〜北)と南西上部斜面は緑の気配なし。北東斜面1940, 1962年噴火跡や 北斜面の187 4年噴火跡はもともと植生がまだ十分に回復していなかった地域だから、当然ではある。 4−4. 山麓部・南西中腹の泥流など 都道沿いの新たな泥流は、2箇所。赤場暁と坪田の北側町外れ。いずれも常習地帯で 、規模は小さい。 ○ 赤場暁; 100m程度にわたって舗装道がまだらに黒く見える。薄くスコリア混 じりの泥水が流れた程度で車の通行に支障はなさそう。 ○ 坪田の北側町外れ(橋の北側); 100m以上にわたって舗装道が黒く見える。 山側2箇所から出てきているように見える。車の通行に影響か。 ○ 南岸沿い; 仮設橋や大路西(バス埋没デルタ)など、最大関心地域はたなびく ガスの下のため確認できず。 ○ 村営牧場付近; 1983年火口列より東にあらたな泥流のひろがりは無い。      前回1週間前(4月27日)と同じ分布に見える。 1983年C火口列西側滑落崖を斜めに下る鉢巻き道路坂道は火口列側からの押し出しに より一部埋没、遮断されているが変化なし。 手島牧場(〜阿古)への分岐点以北の西側鉢巻き道路は泥流により各所で寸断、但し 新しいものではない。 4−5. 海食崖崩壊すすむ?  ふだん注意がつい山頂にいってしまって海食崖まであまり目が届いていないうちに、 見過ごした変化も結構あったかもしれない。(火山活動とは直接関係ないが、復旧作 業や今後のためには要観察。) ○ 三宅中学ヘリポートの海食崖上部側面; 剥がれ落ち、地山が露出している。幅 はヘリポートの赤色鉄板を敷き詰めた正方形の1辺の約1.5倍。以前からあった? ○ 測候所付近の海食崖の崩れ。以前からあった?(両者とも前の写真などで要点検。) ○ 伊ケ谷の海食崖; 1週間前(4月27日)と変わらず。壁を覆っていた吹きつ けセメントが大部分剥がれ落ち、壁面はほぼ総露頭になっている。吹きつけセメント は北端と南側上部(坂道の側面)のみまだ残っている。西向き全面露頭の上端際に都 道が走っているため要注意箇所だが、このところずっと後退の兆しは見えない。 5. その他 阿古に船が来ている(港外停泊中)。陸上作業行われているらしく、主に西側に車の 行き来がある。 クリーンルームならぬクリーンハウスでの夜間常駐は今夜から始まるらしい。青山副 知事・山本気象庁長官・長谷川村長はじめご一行様が警視庁ヘリ「おおぞら」で行か れたことを夕刻のニュースで知った。我々観測ヘリ帰投後の出発。天気も回復して、 うまくカルデラ内も見えたのではないか?  (大島 治)