5月14日(月) 今回搭乗したヘリは警視庁航空隊の「おおとり」号. 同乗者は宮城氏(産総研)の他,パイロット3名,警視庁作業班3名. 午前9時00分,東京ヘリポートを離陸。三浦半島経由で10時06分三宅島三宅中学ヘ リポート着陸,警視庁作業班降機後,観測開始。10時49分ごろまで観測を行った。 観測終了後、御蔵島にて警視庁1名搭乗の後,11時27分神津島へ到着、給油。同 12時45分離陸,三宅中ヘリポートにて警視庁作業班搭乗後、東京ヘリポート14時 00分帰着。 三宅島付近の天候は晴れ。海上もべた凪。 観測時の飛行高度は約900m。この高度でカルデラリムに沿って坪田TV中継所―登 山道跡―スオウ穴間を数回往復。途中熱赤外による温度測定のため火口西側にて 数分間ホバリングしてもらう。後に一周道路に沿って高度300-400mほどで神着― 三池―坪田と時計回りに周回、坪田港付近から御蔵島へ往復ののち、ふたたび坪 田―阿古―伊ヶ谷 -神着と周回し、神津島へ向かった。 [噴煙] 噴煙は火口上空1400〜2000mまで上昇した後、緩やかに北東方向に流れる。ほぼ 同じ方向に,青みがかった硫酸ミストがカルデラリムから中腹まで立ち込めてお り、観測時にはヘリはミストを避けてカルデラの西側を往復した。ミスト分布域 の端にかかると、硫黄臭を感じた。噴煙の量は少ない。(写真1) [カルデラ内] 噴煙量はすくなく、カルデラ内の火口内外の噴気がよく観察できた(写真2)。 カルデラ内の主火口は2重になっており(写真3)、内側の火口からは盛んに白色 噴煙がでていてその内部を見ることは出来なかった。外側の火口底にはほぼ一面 に硫黄の付着が見られる。中央部には青白いガスが出ている場所が認められ、そ の周辺には硫黄の付着が見られない(写真4)。この部分の温度を測定したところ 約360℃であった。火口外に分布する噴気の周辺にも、広い範囲に硫黄の付着が認 められる(写真2)。 11日に金子氏が指摘した「赤い水」は、その広がりなどに変化が見られず、「赤 い液体が乾いた跡」のように見えた。同様の「赤い水」が南側の池のそばにも認 められた。そのほか、カルデラ内の地形に大きな変化なし。 [カルデラリム] 11日に金子氏が指摘した「カルデラ縁南東部,雄山林道終点付近の割れ目」の部 分が比較的大きく崩落し(写真5)、カルデラ内南側の池の縁にある崖錐が成長し た。その他特に変化なし。 [山体斜面] 噴煙のたなびく方向の偏りを反映しているのか,山腹の植物の変色に地域性がみ られる。杉は三池から坪田にかけて変色が著しい(写真6,金曾から山頂方向)。 新澪から阿古にかけては広葉樹の枯れが低いところまで目立つ。神着-美茂井にか けては枯れた広葉樹の枝が目立つが、それ以外の植物は青々しているので、これ は 8月の降灰時に折れた枝かもしれない。 パイロットの皆様のご協力により,今日は充実した観測が出来ました。感謝。 (下司信夫)