12月20日(木) ヘリコプター:海上保安庁羽田航空基地 「わかわし」MH805  観測搭乗者:下司(東大地震研), 川辺(産総研),古屋(東大地震研・重力), 中堀・林(気象庁) フライト: 8時30分海上保安庁羽田基地集合,9時51分離陸,三浦半島東岸を南 下し,三宅島神着上空へ10時30分進入.三中ヘリポートに着陸し,古谷氏降機, 直ちに離陸し,COSPEC観測に入る.三宅島の東5〜7マイルを,噴煙をくぐりなが ら4回測定.11時40分ごろCOSPEC観測終了・火口観測に移る.12時23分三中ヘリポー ト着陸,古谷氏乗機.給油のため新島空港に12時38分着陸,13時28分新島離陸, 伊豆大島上空を経由し,横浜上空を経て羽田基地へ14時16分帰投.長時間にわた る丁寧なフライトに感謝します. 天候: 伊豆大島近海から三宅島手前にかけて,積雲が密集していたが,三宅島 周辺は晴れていた.三宅島周辺の海上には弱い白波.風は北西風(4500ftで22kt). 噴煙の状況: 噴煙量はかなり少ない.カルデラ内主火口から白色の噴煙がカルデ ラ壁を越えてゆっくり上昇する.数分おきにやや強い塊状の噴煙が上昇する.噴 煙高度は最大1100m(海抜)で,塊状の噴煙の上昇により100m程度の増減があった. 火山ガスがカルデラ内に充満しているためカルデラ底はあまりはっきり見えなか った.強い北西風により噴煙・火山ガスはカルデラ縁を乗り越えるように漂い, 山腹に沿って流下していた.白色噴煙は島の海岸線手前で消滅し,火山ガスが 20km以上遠方まで漂っていた.火山ガスの底は海面についている.COSPEC測定中 に噴煙の下をくぐる時,やや硫黄臭を感じた. カルデラの状況:  12月5日大島氏報告にあるように,すおう穴西側のカルデラ壁 の数箇所が新たに崩壊し,その崩落土砂により北側の池がほぼ埋没している.池 を埋めた崩壊土砂は,カルデラ縁最高点のピークのすぐ東側にあたるカルデラ壁 の上部が剥落により供給されたらしい.新たに形成された崖錐とマウンドの間に は北側の池の一部が残存しているほか,すおう穴直下の崖錐の下に浅い水溜りが 出来ているように見える.また,すおう穴西側でも断続的な崩壊が進行し,すお う穴直下の大きな崖錐の表面が新たな崩落土砂に覆われている.その他,カルデ ラ縁には特に大きな変化は見られなかった. 池を埋めた崩壊土砂が,岩なだれ堆積物としてカルデラ底に広がっているのか, あるいは崖錐として崩落個所直下にまとまっているのか,火山ガスのため確認で きなかった.カルデラ壁裾部に崖錐が形成されているのは確かだが,写真を検討 してみるとカルデラ中央部の,小さな池が点在していた付近の地形が以前に比べ てのっぺりしているように見えるため,カルデラ中央部まで崩壊堆積物に覆われ ている可能性もある.次回の観察時には,この崩落堆積物の分布に注意していた だきたい. 主火口の状況:カルデラ内に充満している火山ガスのため,主火口付近の状況を はっきりと確認することが困難であったが,観察出来た範囲では火口状況に顕著 な変化は見られなかった.火砕丘東側・北側裾野にある噴気がやや活発にもみえ る. その他:冬になって,ドアオープンしながらの観察は大変寒い.外気温は数度. 手袋が必要. (下司信夫) 写真1 南東方向三池港沖からみた三宅島.噴煙上端は高度1100mまで上昇する. カルデラ縁を越えた噴煙は山腹にそって坪田-空港方面へ流下する. 写真2 主火口から立ち上る白色噴煙.強い北西風に押し倒され,斜めに上昇する. 東から見る. 写真3 カルデラ北壁.新たに形成された崖錐によって北側の池がほぼ完全に埋もれ ている. 写真4 参考:写真3とほぼ同アングルの,本年11月1日撮影の写真. 写真5 崩落部拡大.北壁最高点に突き上げている尾根の上部が崩壊した.推定され る崩壊部を点線で囲む