1月18日(金)  ヘリコプター:海上保安庁羽田航空隊 「わかわし」   観測搭乗者:川辺さん(産総研),中堀さん・山崎さん(気象庁),下司(東 大地震研) フライト:9時36分,海上保安庁羽田基地離陸.浦賀水道中央,伊豆大島東海上を 経て10時14分三宅島上空に進入,観測開始.椎の木ランド付近から北側,東側の カルデラリムぎりぎりを回って坪田のテレビ中継塔付近までを4往復.10時52分 火口観測終了.12時03分までCOSPEC観測.5マイルおよび7マイルを4測線.12時 12分新島空港着.昼食の後13時40分離陸,横浜沖の漂流油の処理現場上空で海上 保安庁側が撮影作業を行った後,15時00分羽田基地着. 天候:三宅島上空は曇り.雲底は山頂ぎりぎり(800m).観測開始時には北東の 風15kt.のち10kt.高度700mでの気温1.7℃.COSPEC測定時の海面上約100mの気温11 ℃.海上はうねりあり,白波散在. 噴煙・火山ガスの状況:雲のため噴煙の高さは不明.海抜1000m以上まで上昇してい るように見える(Fig.1).島内では村営牧場からレストハウスにかけて青白いガ スが流下し,富賀付近から海上へ流れ出る. 白色噴煙およびガスは南西海上へ流れ (Fig.2), 青白いガスの帯は20km以上遠方まではっきり追跡できる. ガスの帯を 通過してのCOSPEC観測中には,かなり強い硫黄臭を感じた.また,SO2検知器はしば しば1ppmの値を示した. 主火口の状況:濃い白色噴煙のため,主火口内部はほとんど観察できなかった( Fig.3).火口最高温度は310℃とのこと.その他の噴気の場所などに大きな変化は ない.低い気温のせいか,いずれの噴気も濃い白色の噴煙となっている.噴気の出口 付近ではやや透明で,少し上昇すると不透明の白色噴煙となる. カルデラ床の状況: カルデラ内外に新たな降灰の痕跡などは見られなかった.昨日 の雨のせいか,全体に水溜りの面積が広く,あらたな水溜りも生じている.西側の黒 い池の色は,黄土色に変わっている(Fig.4).北側の池の跡は,崖錐より低傾斜の斜 面からなる崩落土砂で埋められ,その上に小さな崖錐が成長している(Fig.5).北 西側の壁の裾にも,新たな崖錐が出来ている.また,スオウ穴直下の崖錐もやや大き くなっている.東側のカルデラ壁の裾に発達する崖錐には大きなガリーが刻まれて いる(Fig.8).このことから,この部分の崖錐は現在ほとんど成長していないと思 われる. カルデラ壁の崩壊:スオウ穴西側の壁は,あいかわらず新鮮な崩壊面をみせており, その下部の崖錐表面が新鮮であることは,この部分での崩壊が進行していることを 示している.また,最高点のピークの下方,標高740m付近にはっきりした数条の亀裂 が生じているのが確認できた( Figs.6,7).今後,最高点ピーク全体が崩壊する可 能性もあるため,スオウ穴付近では今後注意が必要. (下司信夫) Fig.1 西側から見た三宅島 Fig.2 南西海上にたなびく火山ガス Fig.3 北から見る主火口付近.濃い白色噴煙が上昇する. Fig.4 黄土色に変わった西側の池. Fig.5 埋没した北池跡.スオウ穴の下あたりに新たな水溜りができている. Fig.6 カルデラリム最高点北側斜面にみられる新たなクラック群(矢印). Fig.7  Fig.6のクラック群の位置 Fig.8 侵食されつつある東側カルデラ壁下の崖錐.