2月24日(火) 今回の同乗者は宮下さん,近澤さん,鳩岡さん(以上,気象庁)の計4名.搭乗した ヘリは海上保安庁の「わかわし」.天候は晴れ時々曇り. 10時11分,海上保安庁羽田基地を離陸.三宅島に向かう.11時5分に三宅島上空に到 着,火口観測を開始した.火口観測は11時5分から15分までのおよそ10分間行った. 火口観測終了後,COSPECによるガス観測を行った.ガス観測が終了した11時30分に三 宅島を出発.途中,伊豆大島の座礁船(の残骸)を確認しながら帰路に就く.12時43 分,羽田基地に到着.丁寧なフライトを敢行してくださったクルーの皆様に,篤く御 礼申し上げます. [噴煙] この日は山頂付近の風が弱かったため,噴煙は複雑な軌跡をたどりながらほぼ垂直に 上昇した後,上空の弱い西風に乗ってゆっくりと東〜北東へ流されていた(写真1,2, 3).先日の降雨の影響か,噴煙の量は1/20の津久井さん,2/3の嶋野さんの観測時に 比べて多い.噴煙の色は白色で,火口から定常的に放出されていた.噴煙の到達高度 は海抜1200〜1300m程度(写真1)で,カルデラリムからの正味の上昇高度はおよ そ500m程度であった.山頂付近の風が弱いため,青みがかった硫酸ミストは,遠方に 拡散することなく,カルデラの縁からあふれるように北西〜東斜面の広い範囲に流下 していた(写真3).カルデラの北〜北東方向では,強い臭気を感じた. [カルデラ底] カルデラ内部の様子は,ほとんど変化していない(写真4).カルデラ底には複数の 茶褐色を呈する水たまりが存在する.噴気を供給する火口付近からは,白色の噴煙が プリューム状になって定常的に放出されている(写真5).噴気が放出される場所に はあまり変化はないが,2/3嶋野さんの写真と比較すると,噴気量は多い.青みがかっ た硫酸ミストは,白色噴煙にまとわりつくように放出されている.水蒸気に比べて比 重が大きいためか,硫酸ミストは途中で白色噴煙から離脱し,やや低い高度(〜カル デラリムの標高付近)で側方に滞留している.そのため,山頂付近はミストが滞留す ることによってできる紫褐色(?)の雲で薄く覆われている(写真2). [カルデラ壁およびカルデラリム] カルデラ壁の様子も変化はない(写真6).新たな崩壊地形やそれに伴う崩壊堆積物 も認められない.しかし,以前カルデラ南西部で顕著に観察された大きな亀裂は確認 できなかった.いままであまり気に留めなかったが,北側斜面には,比較的標高の高 いところまで黄褐色を呈する変質帯が認められる(写真6の右側)が,それ以外の方 向には,このような変質帯は同一標高には露出していない. [山腹] スオウ穴は緑乳色を呈し,その色調や水位に変化はない(写真7). [その他] 近澤さんによる火口温度の測定結果は,最高105度であった. (大野希一) [写真の説明] ※撮影時刻は誤差1秒以内です. 写真1 南東から遠望した三宅島.風が弱いため,噴煙は垂直にゆっくり上昇した後, 上空の西風にのってゆっくり東〜北東にながされていく.山頂付近には,紫がかった 硫酸ミストの滞留層が認められる.11時21分46秒撮影. 写真2 北西から見た三宅島.写真の奥側(北東側)に向かって流れる白色の噴煙と は別に,青みがかった硫酸ミストが北側(写真の左〜左上)に拡散している.11時33 分45秒撮影. 写真3 北東から見た三宅島.白色の噴煙(写真左側)は北東方向に流れるが,硫酸 ミスト(写真右側)は山頂付近に滞留し,特徴的に紫がかった滞留層を形成する.11 時06分14秒撮影.     写真4 南南西からみたカルデラ底のほぼ全景.11時08分38秒撮影. 写真5 北西から見た主火口周辺.噴気を供給する火口付近からは,白色の噴煙が定 常的に放出されている.先日の降雨のせいか,噴気量はやや多め.青みがかった硫酸 ミストは,途中で白色噴煙から離脱し(写真左側の”もや”),山頂付近に滞留する. 11時13分58秒撮影. 写真6 ほぼ真南から見たカルデラの北西壁.北側斜面には,比較的標高の高いとこ ろまで黄褐色を呈する変質帯が認められるが,それ以外の方向にはこのような変質帯 はない.11時12分57秒撮影. 写真7 スオウ穴.湖水は緑乳色を呈し,その色調や水位に目立った変化はない.写 真左側の”もや”は硫酸ミストによるもの.10時14分26秒撮影.