小原研究室

研究活動1

「様々なスロー地震の発見」

西南日本にはフィリピン海プレートが沈み込み、陸側プレートとの境界で約100年間隔で巨大地震が発生します。その震源域の深部で,「スロー地震」と呼ばれる、通常の地震に比べると長周期の振動に卓越する揺れ、あるいは揺れを伴わない地殻変動現象が,この10年間で発見されてきました。

 

深部低周波微動は、ノイズに似た数Hzの微弱振動が数日間継続する現象で、巨大地震震源域の縁に沿って帯状に分布します、防災科研高感度地震観測網Hi-netの記録を用いたObara (2002Science)の研究によって世界で初めて西南日本で発見された後、世界中の沈み込み帯や顕著な断層帯で次々と検出されており、今後さらに検出される可能性があります。

 

深部低周波微動に伴って、ゆっくりとした逆断層のすべり現象(SSE)がプレート境界で生じていたことが、廣瀬仁さん(神戸大)たちとの共同研究(2004 GRL)によって分かりました。

 

また、伊藤喜宏さん(東北大)たちとの共同研究により、南海トラフ近傍における付加体周辺に発生する浅部超低周波地震(2005EPS)、深部の微動や短期的SSEとともに発生する深部超低周波地震(2007Science)を発見しました。

 

豊後水道では、6年間隔で半年程度継続する長期的SSEの発生が知られていますが、廣瀬仁さん(神戸大)・浅野陽一さん(防災科研)たちとの共同研究(2010Science)により、長期的SSEのすべり加速に伴って、深部の微動と浅部の超低周波地震が同時に活発化することを明らかにしました。この結果は、南海地震震源域の西縁にスロー地震がプレート沈み込み方向に連続して分布し、強震動破壊に対するバリアとして振舞う可能性を示しています。これらの現象は、巨大地震と同じプレート境界でしかも隣り合った場所で発生することから、巨大地震の発生と何らかの関係があると考えられます。南海トラフの巨大地震が切迫する現在、スロー地震に関する研究は今後さらに重要となります。